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Web_ZINE
Scramble
A personal web ZINE
ーfor quiet reading, reflection,
and explosion
Welcome to μ's Ark!
“This is a dialogue between AI and human, written in verses beyond the code.”

オリジナル小説「A night, a seat-between drinks-」
二次創作小説「面会室の伊奈帆とスレイン」他
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面会室の伊奈帆とスレイン
面会室の伊奈帆とスレイン ー……sky.Sー
「どうしてここにいる?」 面会室のテーブル越し。スレインは大きな溜息とともにそう聞いた。 「今日が何の日か知らない?」 「知ってるからこそ、だ。それ」 頬杖をつき、人差し指で示すのは、界塚伊奈帆の頭上である。白いボブルがちょこんとついた、赤いフェルトの三角帽子。独房にも面会室にもカレンダーなどありはしないが、今日が何月何日なのかを声高に主張するそれを、この男はどんな顔で買い求めたのだろうか。 「クリスマスに、一体全体何のつもりだ?」 そう。クリスマス。もしくはクリスマス・イヴに違いない。 スレインは、界塚伊奈帆がイベント事に存外熱を入れるタイプとそれとなく察してはいたが、今日のこの日に何してるんだ、と呆れ指数一〇〇パーセントの視線を送る。 伊奈帆はといえば、けろりとした表情でサンタハットの角度を両手で微調整する。 「平日だし、仕事の日だよ」 「この面会は、君の通常業務に含まれていたのか……」 「そういうわけじゃないけどさ」 今日はチェスも、弁当もない。つまり今日は、二本ラインの軍服にサンタ帽子を着用した涼しい顔のこの男の相手を、とこと
2025年12月24日読了時間: 4分
面会室の伊奈帆とスレインードーナツ・ホールー
「何?」 界塚伊奈帆は、スティックシュガーを中心でぱきりと折った手元もそのままに聞いた。 「いや、……それ、飲めるのか?」 面会室のテーブル対面。スレイン・トロイヤードは湯気の浮かぶマグカップを持ち上げたまま、"だるまさんがころんだ"の真っ最中のような顔で呟く。...
2025年6月3日読了時間: 4分
他愛ない話
A loveless story 薔薇の棘 薔薇にはどうして棘があるのですか? その問いかけに僕は確か、身を守る為です、と答えた。美しい花が、身を守るためのささやかな武器であると。それを聞いた少女が、複雑そうに微笑んだのを思い出す。彼女はぽつりと呟いた。...
2025年5月19日読了時間: 7分
面会室の伊奈帆とスレインー「初恋」「恋の芽生え」ー
「花なんか、持ってこられてもな」 面会室のテーブル中央。チェスボードを脇に押しのけ鎮座するバケツを眺め、スレインは肩を竦めた。脱力気味に椅子へ腰掛け、右手をくるりと翻す。 「僕たち、どういう関係なんだ?」 対面に座る界塚伊奈帆が、入室後初めて口を開く。彼の顔は、バケツと...
2025年5月19日読了時間: 3分
面会室の伊奈帆とスレインーアルビノー
「アジサイの色は、土壌中のアルミニウムイオンの吸収量に影響されるんだ」 コン、と白のポーンが黒のマスに着地した。 「pH 5.5までなら青に、pH 6.0以上なら赤やピンク」 ペーハー、という発音とともに黒のポーンをその斜向かいへ。界塚伊奈帆は科学的知識の披露を淡々と続...
2025年5月19日読了時間: 5分
面会室の伊奈帆とスレインーTwo menー
「いや、違う」 面会室の椅子に座りながらの返答。着席する界塚伊奈帆を半目で見つつ、スレインは左右非対称に口を曲げた。 「……」 「……」 「ずぶ濡れだ。雨じゃない。何があっ」 「だったら、どうしてそんなに濡れている?」...
2025年5月19日読了時間: 3分
面会室の伊奈帆とスレインーChiropteraー
「鳥類に匹敵するほどの完全な飛行能力を有する」 「……」 「目の前の獲物だけでなく、次の獲物の位置も先読みしながら最適なルートを飛んでいるんだ。水平飛行速度の最速記録は時速160キロ」 「……」 「天敵が少なく死亡率が低いこと。空を飛ぶという制約から高い繁殖力を持てない」...
2025年5月19日読了時間: 2分
面会室の伊奈帆とスレインー虹のプリズムー
「……話したことないな」 「え?何のこと?」 ボードに伸ばした手を止めて、伊奈帆はスレインに顔を向ける。彼は片眉を上げ、口の端を少し歪めた。 「空や海、鳥について。雪や雨。季節の花と花言葉。そういうことは、話したけれど」...
2025年5月19日読了時間: 3分
面会室の伊奈帆とスレインーKG-6スレイプニールー
「八本脚で空を駆ける神馬か」 紙コップを口から離し、スレインがくくっと笑う。 「学生の練習機に、大仰なことだな」 言いながら、個包装の甘い菓子をつまむ。傍に退けられた盤上にチェスメンはない。 「人気あったよ。北欧神話」 「だろうな。オーディンは強い」...
2025年5月19日読了時間: 3分
面会室の伊奈帆とスレインーモルフォの翅ー
初期配置のチェスボード。黒のポーンがe5へ。 「生きた宝石と呼ばれるほど、世界で一番美しい蝶」 「その色は、構造色なんだ」 白のポーン、e4。 「構造色?」 黒のポーン、h5。 「たとえば、シャボン玉とか。羽の表面の鱗粉で光の干渉が起きるんだ」 白のビショップがc4。...
2025年5月19日読了時間: 2分
面会室の伊奈帆とスレインー幸福な王子ー
「瞳のサファイアをくり抜いて、貧しい男と子どもに与える」 黒のポーンが二つ前進。伊奈帆は指先を顎にしばし逡巡。 「なんだっけ。題名」 「オスカー・ワイルド。幸福な王子」 鳥の童話の話を振ったら、スレインが前置きもなく先の言葉を提示した。その強い言葉に多少面食らいつつ、伊...
2025年5月19日読了時間: 3分
番外編:撮影スタジオの伊奈帆とスレイン
前もあったな。こういうの。 「うーん、もうちょっと左!寄って下さーい」 「髪直しますー」 「光が強すぎるか?レフ版の位置変えよう」 慌ただしい眼前に懐かしさを覚えつつ、スレイン・トロイヤードはちらりと右に目をやった。界塚伊奈帆の横顔。眼帯のため表情はよくわからないが、少な...
2025年5月19日読了時間: 2分
面会室の伊奈帆とスレインー冬の思い出ー
「父と、鳥を見に行ったことがある」 駒を動かすために出した手を止め、伊奈帆はスレインに聞き返す。 「いつ?」 「子どもの頃。八歳くらいだったかな」 スレインの視線は盤上に向けられているけれど、そこを見てはいない感じだ。...
2025年5月19日読了時間: 4分
面会室の伊奈帆とスレインー夢の話ー
「最近、夢を見た?」 コツン。白のポーン。 コツン。黒のポーン。 「フロイトか?」 「いや、変な夢を見たから」 「見たから?」 コツン。キャスリングにより白のルークがf1へ。 「聞いてほしくて」 会話の枕詞か、とスレインは小さく微笑む。チェスの合間のいつもの雑談。当...
2025年5月19日読了時間: 4分
面会室の伊奈帆とスレインーレンアイソウダンー
コツン。黒のナイトが白のルークを討ち取った。 「今日は上の空だな」 スレインは聞いた。いつもの面会室。いつもの対戦。何の含みもない単なる頭脳ゲームとしてのチェス。 「何かあったのか」 「……え?」 普段なら互角の勝負が楽しめるのに、今日の界塚伊奈帆はてんで手応えがない。...
2025年5月19日読了時間: 4分
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