星を撮る人[note応募作品]
- μ

- 2025年12月31日
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ーーこんな感じかな?
片目を瞑り、ピントを合わせる。直角にした二指を点対象で配置するファインダーを覗き込む。
ベガ。こと座の一等星。織姫の白い糸。
アルタイル。わし座の一等星。雨の天の川を越える翼。
デネブ。はくちょう座の一等星。少し控えめ。夏の大三角形の立役者。
アンタレス。さそり座の心臓。真っ赤に輝く超巨星。
「さそりの火よ」
私のイメージセンサーで、プルシァン・ブルーの夜空に沈むさそりが蠢く。心臓に灯るアンタレス。
「まことの皆の幸いのため、夜空で祈るアレス」
「アンチ・アレス。火星の敵よ」
アンタレスの星間滅光。散乱された青い光は宇宙の塵へ。地球に届く赤い光は私の網膜へ。 到達する。億万光年の時を超えて、今ここに。
「私は、確かに見届けた」
祈りながら空腹で死んださそりの火を、私は確かに見届けた。夏期講習の帰り道。葦の岸辺で豆腐屋のラッパを聞きながら。




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