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中学生イラストレーター[note応募作品]

  • 執筆者の写真: μ
    μ
  • 2025年12月31日
  • 読了時間: 2分

「ご飯よー」

「はーいー!」

「三回目よー?」

「はーいわかってますー!!」

「そうめんすっかり伸びちゃってるわよー」

「ぬるいー?」

「氷はあるけどねえ」

「もうちょいで行くー!」

「母さんそろそろパートなのよー」

「片しとくからー」

「そー?じゃあお願いねー」


 パタパタパタ、パタパタ、バサ、ガラガラ、ガラ、ブーン。 しーん。


「……」

「……ちゃうなあ」

「……あっ」

「……あ〜」

「……」

「おっ!」

「うんうん」

「反転っと」

「マスクして……」


 ぴょん!


「ひょあああっ!」


 ふにふに。のびー。


「ミケー、もうびっくりするやんかー」


 パタン。コロン。


「そうめん食べるかー」


 ミケを背中から下ろして立ち上がり、本の浮島をぴょん、と飛んで引き戸をガラガラと開ける。裸足で歩く板床はひんやりとして気持ちいい。急にお腹が空いてきた。台所の取手の金具に指をかける。


 ガラガラガラ。


「あ、にいちゃん」

「おう」

「それ、私のそうめんちゃうん?」

「すまん、残りモンかと思って」

「まあええわ。なんかあるかなー」

「カップ焼きそばあるで」

「あっついもんはなー」


 パタン。


「こら、アイスはやめて飯食え」

「今から作るんめんどい」

「しゃーないなー」

「お、なんか作ってくれるん?」

「握り飯やな」

「うーん、まあそれでええわ」

「作ってもらうのにえらそうやのう」

「オニイサマ、アリガタキシアワセ!」

「へいへい」


 パカッ、ポッ、シャッ。


「絵ぇできたんか?」

「んー……」


 キュッキュッ、キュッ。


「今日までやろ?」

「そーなんやけど」

「なんや、浮かん返事やの」


 コトン。


「いただきます」

「おう」


 もぐ、もぐもぐ。ごくん。

 もぐ、もぐ。

 コポコポコポ。


「ほれ、茶」

「うん」


 …………。


「にいちゃん。うちさっきなー」

「おう」

「線画完成して、色塗って、あとは加工や!ってとこでミケが背中に乗りよったん」

「ほお」


 むしゃむしゃ。ごくん。


「で、変なボタン押してしもて」

「うん?」

「データ消えてしもたんさー」

「……そりゃ」

「……」

「……」


 チリンチリン。

 にゃーーーお。

 ぴょん!


「うお!」


 ミケがにいちゃんの膝に飛び乗った。気持ちよさそうに伸びをして、欠伸をして丸くなる。


「まー、あれや。災難やったな」

「そー。災難やったわ」


 おにぎりの最後の欠片を頬張って、私は椅子から立ち上がる。流しに皿を置いて、にいちゃんの膝の上のミケの背中を三回撫でた。


「でも、次描くやつはもっと上手いに違いないわ。ミケにチャンスもろたな」


 そう言うと、にいちゃんは冷凍庫からアイスを二つ取り出して、封を切って私にくれた。


 
 
 

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