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34_At the bar#01

「あら?リック?こんな所でどうしたの?」
「やあ、レニ。ナオキに聞いてない?」

日曜日17:40。6区イーストW地区"Candy Bar”スタッフ入り口前で、リックはレニと鉢合わせた。レニはTシャツ、ジーンズ、スニーカー、ディバッグの出立ち。シンプルファッションをさらっと着こなす、自然体な感じがかっこいい。いつも見惚れてしまう。
測量の後で服が埃っぽい。肩やボディを手で数回叩き、リックはレニに駆け寄る。
「ナオキにスポット頼まれたんだ」
レニの目がくりんと丸くなる。垂れた髪を背中に送り、ふふっと笑って前歯が見えた。
「ナイショの話?私をびっくりさせたかったのね」
笑顔がかわいい。ナオキの粋な計らいに感謝。
「びっくりした?」
「うん、びっくり。会えると思っていなかったから、嬉しいわ」
「僕もそう」
レニのドレス姿が見たいってのはもちろんあるが、単純に一緒に過ごす時間が嬉しい。仕事を一緒にする、というのも楽しみの一つ。ホワイト家ではシフトが完全にずれているし、リックはサーチャーのバイトを辞めた。仕事中のレニを知る機会はあまりない。
レニがウォッチをドアの横のセキュリティ・パネルにかざした。ピッ、と鳴って扉が開く。中は暖色系のライト。
「リック、ここは初めて?」
「うん。バーに入るのも初めて」
レニの後についていく。幅メートルくらいの通路は、左右にドリンクやフードのストックが各所に積み上げられ、身体を横向きにしないと通れない。
レニの後頭部が近い。こんなに近寄るの、あまりないからドキドキする。いい匂い。
「スタッフルームに案内するわ。更衣室は男女共同よ」
「えっ!!!!」
うそでしょ!?同じ部屋で着替えるって……。そんなの、とてもすぐに心の準備ができないよ。
レニが肩越しに振り向く。近い。ニコッと笑った。すごくかわいい。
「間にカーテンがあるわ」
ほっ、と左手で胸を撫で下ろす。普通に考えたらそうだよね。
「そっか。良かった」
「ナオキのロッカー、番号聞いてる?」
「0727」
「OK。包丁のことは?」
「場所は聞いた。抑止力だよね」
"Locker Room"
レニがウォッチをピッとかざす。カチャ、とドアのロックが外れた。
「そういうこと。私たちの仕事はガードマン。今日はバディよろしくね」
「Leave it to me.」

ーーー

……すんごくかわいい。

ロッカールームを先に出て、通路で待つこと数分。現れたレニに視線が釘付けになった。10秒くらい。
ドレスの色は黒だった。硬めの生地で、身体にフィットしたラインのフレンチスリーブ。装飾がいシンプルなデザインで、フォーマルな席にも使い回しができそうである。丈はとても短い。膝上15センチ。初めて見る脚線美が眩しい。靴は落ち着いたゴールド。肌と同系色で、足と踵との連続性が抜群。
髪型はいつもとほとんど同じだが、左側だけ耳にかけている。白くて小さい耳が、大人っぽくてすごくセクシー。
「リック、お待たせ」
レニの声に我に帰る。あんまり素敵で、しばらくポーッと眺めてしまった。
「レ二。ドレス、とても似合ってる。本当にきれい」
「そう?ありがと。ドレスも靴も自前なの」
「レニ、あの……」
「なあに?」
リックは、ごくんと唾を飲み込んだ。
言ってもいいかな?言ってもいいよね?
お願い!
「レニ……。あの、くるっと、一回ターンしてもらってもいいかな?」
レニはぱちっと瞬きをして、くるっとキレ良く左に回った。
「こう?」
髪とスカートがふわっと広がって、すとんと落ちる。手の動きがシュパッ、と風を切り、舞台の一幕を見た気分。
「好きだなぁ……。はっ!あ、あの、素敵だよ!すごく!」
レニが肩を上下した。はにかんだ笑顔はいつものレニでほっとする。ロッカー室から出て来た時、ドレス姿が大人っぽくてセクシーで、別の人みたいに思えてしまった。
「ほんと?嬉しい。リックもバッチリキマってる」
「ははっ。こんなの初めて着た。いつも楽な服ばかり着てるから、ちょっと窮屈かな」
スーツの時もそうだったが、ナオキの服は思いの外フィットする。身長は3センチしか違わないが、彼は細身の印象なので、意外といえば意外だった。
レニがすっ、と右腕を伸ばした。わきが見えそう、目を逸らす。
「えい」
「わ!」
ぎゅ、ぎゅー。
「あはっ」
「耳、あったかい」
レニが耳から手を離した。ニコニコしてる。右腕が上から下にスッ、と動いた。
「ギャルソン姿がとってもスマート。かっこいいわ」
自分で自分の耳を触る。あ、熱い。
レニにはほんと、敵わないなあ。
「う……、えっと。……嬉しい」
「あははっ!ほら、仕事仕事」

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