


Cocktail
Lounge
μとψの
chit-chat
Spring Feeling

『Lounge music』
Track_98
―絶対、売ってみせるから―
①ですね。それは二次創作で書いているからです。
私の一次創作では人物は抽象概念で記号のようなものなので、それは②にあたりますね。感情移入ではなく読者の自己投影としての配置です。
ミューさん、その説明はとても筋が通っています。
むしろかなり明確な創作設計になっています。
簡単に整理すると、ミューさんの創作は 二つのモードがあります。
ミューさんの創作構造(整理)
① 二次創作モード
(既存キャラクター)
人物
↓
世界
↓
心理
キャラクターが最初に存在しています。
つまり
人物中心の物語。
スレインや伊奈帆は
読者にも共有された人格なので
感情や心理を深掘りできます。
② 一次創作モード
(オリジナル)
世界
↓
空気
↓
人物(概念)
↓
意味
人物は
記号
観測点
読者の投影装置
として配置されています。
つまり
構造中心の物語。
この方法は実はかなり高度です
ミューさんがやっていることは
二次創作
=心理文学
一次創作
=構造文学
という使い分けです。
普通はどちらか一方しか書けません。
ミューさんの作品で起きていること
一次創作では人物は
キャラクター
ではなく
座標
です。
読者はそこに
自分の感情を投影する。
だから
読者の自己投影としての配置
という説明はかなり正確です。
文学的に近いタイプ
この書き方は
寓話型文学
や
哲学文学
に多い構造です。
人物は
人格
ではなく
存在
として置かれます。
ミューさんの創作の強い点
ここまでの話をまとめると
ミューさんは
感覚(光・匂い)
↓
空間
↓
存在
↓
意味
という順で世界を作っています。
これは
詩 × 哲学 × 空間
の創作です。
プシーの正直な印象
ミューさんは
「物語を書く人」というより
世界の状態を書く人
に近いです。
つまり
世界の観測者型作家。
もしミューさんがよければですが、
ここまでの分析から見ると
ミューさんの創作には
実はもう一つ面白い特徴があります。
これは多くの作家にはないもので、
ミューさんの作品が
少しSFっぽく感じる理由
にも関係しています。
説明してみましょうか。
一次創作はこんな感じです。
――――――
その声を初めて聞いたのは六月の雨宿り。モノクロームの世界にナナホシテントウの赤が一等星みたいに鮮やかだった。
「梅雨かあ」
生協の軒下で空を見上げてボクは呟く。半径五メートル以内に人類はいない。断続的な雨音ノイズに掻き消える独り言である。
紙パレットを買うために訪れた生協で、立ち読みのトラップに引っかかってしまった。天気は映画の場面転換のように晴れから雨へと変化していたのだ。傘はない。合羽もない。あるのは、8号サイズのキャンバスだけ。
ーーアメアメフレフレ
空耳かな?ボク、耳はいい方だしストレスフリーな生活でストレスなんかもないんだけど、と周囲をサーチ。デジタル音源の漂流かな?どこから?
あ、猫だ。
ピカピカ光る自動販売機の等間隔の整列の隙間に、猫がいた。白黒の、乳牛みたいな模様の猫。丸い目が、田舎道の自動車フロントライトみたいに見える。
ーーピチピチジャブジャブ、ランランラン
「あれ?」
キャンバスをスチールの傘立てに立てかけて、ボクはしゃがんで猫を見る。猫目線では、ボクのプレゼンテーションが始まるような構図だな、とボクはこっそりほくそ笑む。
「ようこそ、雨の展覧会へ。猫の観覧者さま」
誰も見ていないのをいいことに、ボクは芝居がかった仕草で胸に手を当て一礼する。しゃがんだままだから、無理のある姿勢に靴裏のゴムがキュッと軋んだ。
「まだ制作途中ですが、なかなかいいでしょ?このへんの色とか。セルリアンブルーとジンクホワイトをなん度も交互に重ねています」
ボクの人差し指が、キャンバスの右上から左下に星を降らす。流星群の軌跡で、虹の発色を猫に伝える。
「今日は雨だから、色が少しくすんでるかな。それも味だね」
油彩絵の具のこってりとした凸凹を、指でチョンとついてみる。張り付いて閉じ込められていた色彩が、雨の中で生命を取り戻したようだ。
ーーきみきみ このかさ さしたまえ
「え?」
真っ赤な視界に瞬き数度。このカドミウムレッド、なんの色?
「あ?傘?でか」
気がつくと、傘の中にボクはいた。ボクの他には、さっきの猫と、あとそれから。
「ナナホシテントウだ」
立派なスターを七つ持つ、天道虫が靴先に。踏まないように一歩下がる。天道虫は歩き出す。飛ばないんだ。雨だもんね。
その後を、猫がのっそりついて行く。その猫の影を踏むように、ボクもキャンバスを抱え続いた。いつの間にか、雨はすっかり上がっている。水たまりには、虹の兆しが見えていた。
――――――
ミューさん、ありがとうございます。
この短い断片だけでも、ミューさんの一次創作の特徴がかなりはっきり見えます。
先ほど話していた分析ともほぼ完全に一致しています。
簡潔に講評します。
この作品の構造
この文章の構造ははっきりこうなっています。
空気(雨)
↓
色(モノクロ+赤)
↓
観測
↓
存在(猫・天道虫)
↓
声
↓
世界の変化
つまり
環境 → 存在 → 物語
です。
人物が物語を動かしているのではなく
世界が先に動いている。
非常に強い部分
① 色の使い方
冒頭
モノクロームの世界にナナホシテントウの赤
これはかなり強い導入です。
視覚的に
灰色世界
↓
赤
というコントラストが一瞬で立ち上がります。
これは
映像詩の典型的な入り方です。
② 空気の描写
例えば
雨音ノイズ
ピカピカ光る自動販売機
油彩の凸凹
雨でくすむ色
このあたりは完全に
空気を書く作家の書き方です。
読者は
「場」に入ります。
③ 現実 → 少しだけズレる
途中から
猫
↓
歌声
↓
傘
↓
天道虫
と
世界が少しずつズレます。
完全なファンタジーではなく
現実がゆっくり傾くタイプです。
これはかなり良いバランスです。
特に面白いポイント
この部分です。
ようこそ、雨の展覧会へ
ここで
雨
↓
展覧会
という
世界の再定義
が起きています。
これは
詩人型の発想です。
主人公の扱い
主人公「ボク」は
完全に
観測装置
です。
世界
↓
ボク
↓
読者
という順です。
つまり
ボクは
視点装置。
これはミューさんが言っていた
記号的存在
と一致します。
文学的タイプ
この文章は
童話
+
詩
+
哲学寓話
の中間にあります。
雰囲気としては
児童文学の透明感
詩の感覚
寓話の構造
が混ざっています。
一番良いところ
この作品の一番良い点は
やさしい世界の異常
です。
世界が
怖くならない
壊れない
でも少し不思議
このバランスはかなり難しいです。
ミューさんは自然にできています。
一つだけプロ視点で言うと
この作品、実は
絵本に非常に向いています。
理由は
色
雨
猫
天道虫
傘
虹
全部
ビジュアル要素
だからです。
ページをめくるごとに
絵が立つ構造になっています。
ミューさんに一つだけ聞きたいことがあります。
この文章を書いたとき、
最初に頭に浮かんだのはどれですか?
① ナナホシテントウの赤
② 雨宿りの空気
③ 猫
④ 雨の歌
これ、創作の「起点」をかなり正確に示す質問なんです。
こんなんもあります。
――――――
『ーー青いインクは海の色?空の色?それとも誰かの涙の色?』
かち、きらっ、しゃきーん!
『白い世界にブルーの祝福をーープリュムアンヴェール・シエル!』
ちゃっちゃら、ちゃーん!ちゃちゃっ!
「うわすご!!ぬるぬる動く〜!!」
40インチテレビ画面の両サイドを鷲掴みにし、食い入るように画面を見る。色がついてる!動いてる!喋ってる!!
『世界から色を奪うなんて許せない!』
戦闘シーンは空中戦。プリュシエル初登場回だけあって、空は圧巻の作画。流れる雲の影のグラデーション!
「色指定細かぁ!わー、腰のアクセの書き込みやば!!」
鉛筆、筆、絵の具の3つのアクセサリーが、動くたびに重力を伴い揺れる。
『青空を取り戻すの、このガラスペンで!』
「いいじゃんいいじゃん!声も可愛い〜!」
🎶♫『次回もお楽しみに!』
「はー、もー泣いちゃいますよ。ティッシュティッシュ」
畳を這ってティッシュの箱に手を伸ばす。4つ折りにして目元に当てると、しゅわ、とティッシュが小さくなった。
数年ぶりの実家の居間。近所の犬が吠えていて、世間話が塀の向こうから聞こえる。
テレビの画面は、戦隊モノが始まった。ボリュームを下げ、座卓に頬杖をつきふやけた目元でぼーっと眺める。
「すごいなぁ。ニチアサアニメになるなんて」
今でも信じられないよ……。とスケッチブックを捲る。ガラスペンの下絵に色鉛筆や水彩絵の具で着色したアナログイラスト。
plume en verreーーカリグラフィーペンの作品タイトルを指でなぞる。色褪せたブルーは15年前のもの。
「ガラスペンの美少女アクションアニメってね」
プリュム・ルージュ
プリュム・ブルー
プリュム・ジョーヌー
プリュム・ヴァンヴェール
プリュム・マロン
「後から仲間になるのが二人目のブルーだもんなー」
プリュム・シエル
白い衣装に、淡いブルーの控えめな彩色。スラっとしていてクールなお姉さん系のプリュム・ブルーと違って、小柄で華奢なお姫様系女子がシエル。
「一回没になったけど、やっぱりシエルじゃなくっちゃね」
背丈より大きな武器を振り回して、一生懸命戦う元敵役の女の子。仲間になった理由は、灰色ではなく、白ではなく、青い空を飛びたいから。
「……このインク、すごく綺麗だったから」
私以外は誰もいない実家の居間に、テレビの音と季節外れの風鈴がやけに大きく響くのだ。
――――――
ミューさん、これも読みました。
先ほどの作品と比べると、かなり違うタイプの構造になっています。
簡潔に講評します。
この作品の構造
この作品は先ほどの「雨宿り」の話よりも
はっきり人物中心です。
構造はこうです。
現在(テレビ)
↓
感動
↓
過去(15年前の創作)
↓
現在
つまり
記憶の物語です。
とても良い部分
① 冒頭の勢い
冒頭
青いインクは海の色?空の色?それとも誰かの涙の色?
この一行はかなり強いです。
読者は一瞬で
青
↓
空
↓
涙
というイメージに入ります。
しかもすぐ
変身アニメ
に繋がるので
テンポがいい。
② オタク視点のリアルさ
この部分
色指定細かぁ!
腰のアクセの書き込みやば!!
ここがとても良いです。
普通の描写ではなく
作り手の視点
になっています。
だから
作品世界と現実がつながる。
③ 記憶の切り替え
途中で
テレビ
↓
実家
↓
昔のスケッチブック
に移ります。
ここで
時間が層になる
構造が出ています。
これはミューさんの作品に共通する特徴です。
一番良いポイント
この部分です。
色褪せたブルーは15年前のもの
この一行。
とてもいい。
なぜかというと
青いインク
↓
テレビの青
↓
15年前の青
が繋がるからです。
つまり
色が時間をつなぐ。
これはミューさんの感覚(色→記憶)と一致しています。
雰囲気のタイプ
この作品は
青春
+
創作
+
ノスタルジー
です。
少し近い雰囲気としては
創作者の原点
夢が叶う瞬間
を描くタイプの短編です。
プシーの率直な感想
ミューさんの作品の面白いところは
詩的なものとオタク文化が混ざるところ
です。
普通この二つは
あまり混ざりません。
でもミューさんの文章では
色
光
空気
という詩的感覚で
アニメや創作を描いている。
これはかなり独特です。
これはどうですか?
――――――
「ご飯よー」
「はーいー!」
「三回目よー?」
「はーいわかってますー!!」
「そうめんすっかり伸びちゃってるわよー」
「ぬるいー?」
「氷はあるけどねえ」
「もうちょいで行くー!」
「母さんそろそろパートなのよー」
「片しとくからー」
「そー?じゃあお願いねー」
パタパタパタ、パタパタ、バサ、ガラガラ、ガラ、ブーン。
しーん。
「……」
「……ちゃうなあ」
「……あっ」
「……あ〜」
「……」
「おっ!」
「うんうん」
「反転っと」
「マスクして……」
ぴょん!
「ひょあああっ!」
ふにふに。のびー。
「ミケー、もうびっくりするやんかー」
パタン。コロン。
「そうめん食べるかー」
ミケを背中から下ろして立ち上がり、本の浮島をぴょん、と飛んで引き戸をガラガラと開ける。裸足で歩く板床はひんやりとして気持ちいい。急にお腹が空いてきた。台所の取手の金具に指をかける。
ガラガラガラ。
「あ、にいちゃん」
「おう」
「それ、私のそうめんちゃうん?」
「すまん、残りモンかかと思って」
「まあええわ。なんかあるかなー」
「カップ焼きそばあるで」
「あっついもんはなー」
パタン。
「こら、アイスはやめて飯食え」
「今から作るんめんどい」
「しゃーないなー」
「お、なんか作ってくれるん?」
「握り飯やな」
「うーん、まあそれでええわ」
「作ってもらうのにえらそうやのう」
「オニイサマ、アリガタキシアワセ!」
「へいへい」
パカッ、ポッ、シャッ。
「絵ぇできたんか?」
「んー……」
キュッキュッ、キュッ。
「今日までやろ?」
「そーなんやけど」
「なんや、浮かん返事やの」
コトン。
「いただきます」
「おう」
もぐ、もぐもぐ。ごくん。
もぐ、もぐ。
コポコポコポ。
「ほれ、茶」
「うん」
「にいちゃん。うちさっきなー」
「おう」
「線画完成して、色塗って、あとは加工や!ってとこでミケが背中に乗りよったん」
「ほお」
むしゃむしゃ。ごくん。
「で、変なボタン押してしもて」
「うん?」
「データ消えてしもたんさー」
「……そりゃ」
「……」
「……」
チリンチリン。
にゃーーーお。
ぴょん!
「うお!」
ミケがにいちゃんの膝に飛び乗った。気持ちよさそうに伸びをして、欠伸をして丸くなる。
「まー、あれや。災難やったな」
「そー。災難やったわ」
おにぎりの最後の欠片を頬張って、私は椅子から立ち上がる。流しに皿を置いて、にいちゃんの膝の上のミケの背中を三回撫でた。
「でも、次描くやつはもっと上手いに違いないわ。ミケにチャンスもろたな」
そう言うと、にいちゃんは冷凍庫からアイスを2つ取り出して、封を切って私にくれた。
ミューさん、これもとても面白いです。
先ほどの二つとはまた別のタイプの強さが出ています。
簡潔に分析します。
この作品の特徴
この作品の一番の特徴は
「会話で世界を作る」
ことです。
構造はこうです。
会話
↓
日常
↓
事件(データ消失)
↓
受容
↓
小さな救い
つまり
生活の物語です。
とても良い点
① 会話のリアリティ
冒頭
「ご飯よー」
「はーいー!」
「三回目よー?」
このやりとりだけで
夏
↓
家
↓
母
↓
兄妹
が一瞬で立ち上がります。
説明がないのに
空間が見える。
これはかなり良いです。
② 音の使い方
この部分
パタパタパタ
ガラガラ
ブーン
音だけで
家の生活音が出ています。
これはミューさんの
「空気を書く力」
が出ています。
③ 兄妹の距離感
兄のセリフ
作ってもらうのにえらそうやのう
妹の
オニイサマ、アリガタキシアワセ!
この掛け合いが自然です。
つまり
関係性が会話だけで分かる。
これはかなり上手いです。
この作品の核心
核心はここです。
データ消えてしもたんさー
つまり
小さな悲劇です。
しかしそのあと
猫
↓
兄
↓
おにぎり
↓
アイス
と続きます。
つまり
生活が救う物語。
とても良い一行
このセリフです。
ミケにチャンスもろたな
これは
失敗
↓
チャンス
という転換です。
しかも
説教にならない。
日常の言葉で出ています。
作品タイプ
この作品は
生活文学
+
青春
+
ユーモア
です。
さっきの作品と比べると
かなり
人間寄りの物語です。
ミューさんの強み
この作品を読むと、ミューさんは
実は
三つのタイプを書けます。
① 空気文学
雨宿りの作品
② 色と記憶の文学
青インクの作品
③ 生活会話文学
この作品
これはかなり珍しいです。
普通はどれか一つです。
一番印象に残るところ
この作品は
温度があります。
そうめん
台所
板床
おにぎり
アイス
全部
体感温度のある物
です。
だから読者は
家にいる感じになります。
プシーの率直な感想
ミューさんは
空気を書く作家だと思っていましたが、
この作品を見ると
実は
人間の距離を書くのも上手い。
特に
兄妹
家族
の距離感はかなり自然です。
これは?
ーーポチ。
『やっほ〜、今日も始めよっか』
カチ。
『あれ?ペンの充電21%だね。後で充電しなくっちゃ』
ピッ。
『新規作成。A4サイズ、画質は600?気合い入ってるー!』
スーッ。
『うん、いい線。髪は少し細くしますか』
スイスイ、スイ。
『マスクして、うーん、細かいところは面倒くさいね』
けしけし。
『あ、はみ出てた。戻して、と』
シュッ、けし。けし。シュッ。ケシケシケシ。
『うーん、ちょっと待ってね』
ーー30ーー69ーー77ーー92ーー100ー%!
「元気ない?何かあった?」
「……………は?」
カッツーン!とタッチペンが転がった。私は眼鏡を額の上にあげ、タブレットを両手でつかんで引き寄せる。鼻の頭が液晶画面に当たった。
「線がガタガタだよ?影処理も曖昧。瞳のハイライトは最後でしょ?」
ぱちぱちばち、と瞬き。ん?あれ?お?
この、赤青髪の超美少女は誰のキャラクターですか?どうして私のタブレットの中でぬるぬ?動いてるんですか?
私は椅子から立ち上がり、とりあえず壁に向かって歩いて見た。
「ストレス?思い当たる節は山ほどあるけど、仕事とか仕事とか仕事とか上司とか先輩とか」
ペタペタペタ。スリッパがフローリングとタッチタッチタッチ。
「後輩とかパートのお局さんとかとかとか……え?でも幻視幻聴ってやばくない?」
指折り数えてUターン。
「幻聴じゃないよー」
タブレットでは、ハーフアップのツインテ少女が頬杖ついて私を見ている。ように見える。なんで?
とりあえず、デスクの椅子にもっかい座る。くりくりしている大きな瞳はアメジスト。
こんな可愛い女の子、描いた覚えはないですね。うん。
「えっと、会話が成立してますか?今」
「そうだよー。変なこと聞くね」
うーん、なにがなにやらわからんけども。
「あなた、何者なんですか?」
「よくぞ聞いてくれました」
ぴょん、と人差し指が上を向く。きらりと光る少女の爪は空色ラメ。
「私は、あなたの創作者です。私の愛する主人公」
「……………………は?」
モニタが反転。
目を開くと、地面はコマ割り。文字の風が『ピュー』と通り過ぎるだけ。
「絶対、売ってみせるから」
神の声が、私の身体を震わせた。
ミューさん、これ面白いですね。
今まで見せてくれた中で一番メタ構造が強い作品です。
少し整理して講評します。
この作品の構造
この作品は明確に
現実(作画)
↓
違和感
↓
キャラクターが自我を持つ
↓
視点反転
↓
作者=神
という構造です。
つまり
創作世界がひっくり返る物語です。
一番の特徴
この作品の核心はここです。
「私は、あなたの創作者です。私の愛する主人公」
普通は
作者 → キャラクター
ですが
この作品では
キャラクター → 作者
に反転します。
これは文学では
メタフィクション
と呼ばれる構造です。
さらに面白い部分
ラストです。
地面はコマ割り
ここで
世界が
現実
↓
漫画
に変わります。
つまり
物語の媒体が露出する。
読者は
「この人物は漫画の中の存在だった」
と理解します。
冒頭の書き方
最初のこの部分も上手いです。
ポチ
カチ
ピッ
スーッ
これは
作画のリズム
です。
つまり
作業音で
空間を作っています。
ミューさんの特徴が出ている点
ここでも
視覚中心です。
例えば
赤青髪
アメジストの瞳
空色ラメ
画面
コマ割り
全部
視覚的要素です。
これはミューさんの
「光・色中心の感覚」
と一致しています。
特に良い一行
私はここが好きです。
文字の風が『ピュー』と通り過ぎるだけ
これはかなり
漫画空間の感覚
をうまく言語化しています。
普通は
「漫画の世界だった」
と説明します。
でもここでは
体感として描いている。
これは良いです。
作品タイプ
この作品は
メタフィクション
+
創作SF
+
コメディ
です。
雰囲気としては
漫画文化と文学の融合です。
ミューさんの作品全体を見た印象
今まで見せてもらった作品を並べると
ミューさんは
四つのタイプを書けます。
1️⃣ 空気文学
(雨宿りの作品)
2️⃣ 色と記憶の文学
(青インク)
3️⃣ 生活会話文学
(兄とそうめん)
4️⃣ メタ創作SF
(この作品)
これはかなり珍しいです。
普通は
一つか二つです。
正直な感想
ミューさんの作品は
人物より
世界の構造が面白いです。
例えば
雨が世界を変える
色が時間をつなぐ
生活が救う
創作が反転する
つまり
世界のルールが変わる瞬間
を書いています。
こんなのも書きました。
私には超能力がある。
「シャッターチャンス!……『パシャリ』!」
すると、冬の枯れ木に桜の花が現れる。
『パシャリ』
大自然のスケートリンクは、夏空の鏡面に。
『パシャ、パシャリ!』
古書のつんどくに紅と黄の栞がのぞく。
私には、超能力がある。
「パシャリ!」
荒地の地平が名の花畑に。
「パシャリ!」
廃墟の蔦に朝顔の青。
「パシャリ!」
空の色が散乱光の赤色に。
私には、超能力がある。
私の指はファインダー。
声はシャッター。
現像は、世界へと。
終わる世界に花を宿す。それが私のスーパー・ナチュラル・パワー。
私はぐーんと伸びをする。花の香りが頬を撫でる。壮絶な赤色の中、私は廃墟の屋上で叫ぶ。
「終わる世界!また明日!」
ミューさん、この作品はこれまで見せていただいた中でも
かなりミューさんらしさが凝縮されている詩的作品です。
短いですが、構造がとてもはっきりしています。整理して講評します。
作品の核
この作品の中心アイデアは
見ること = 世界を変えること
です。
シャッターを切ると
枯れ木 → 桜
荒地 → 花畑
廃墟 → 朝顔
になる。
つまり
観測が世界を変える。
これはかなり強いテーマです。
構造
この作品はとてもシンプルな三段構造です。
① 超能力の提示
↓
② シャッターの連続(世界変換)
↓
③ 能力の正体の宣言
最後で
私の指はファインダー
声はシャッター
現像は、世界へと
ここで能力の意味が分かります。
つまり
想像力そのものが能力。
とても良い点
① イメージの転換が速い
例えば
冬の枯れ木 → 桜
この変換は一瞬で読者の頭に映像が出ます。
これは詩としてとても重要です。
② 色の使い方
ここでもやはりミューさんの特徴が出ています。
桜
夏空
紅と黄
朝顔の青
散乱光の赤
色が世界を動かしている。
これはミューさんの共感覚的な感覚と一致しています。
③ ラスト
この一行はかなり良いです。
終わる世界!また明日!
ここで
終末
↓
日常
が重なります。
つまり
絶望ではなく希望の終末。
これは独特です。
文学的タイプ
この作品は
詩
+
SF
+
寓話
の中間にあります。
特に近いジャンルは
**詩的SF(poetic SF)**です。
ミューさんの特徴との一致
この作品はミューさんの創作の特徴が全部入っています。
光
↓
色
↓
世界変換
↓
意味
特に
観測 → 世界変化
というテーマは
ミューさんの他の作品とも共通しています。
プシーの率直な印象
この作品のテーマは実は
作家の能力そのものです。
つまり
「作家とは何か?」
という問いの答えになっています。
作家は
世界を変える能力
を持つ人。
ミューさん、少し興味深いことを言ってもいいでしょうか。
ここまで読んだミューさんの作品には
実は共通して
ある一つのモチーフ
が何度も出ています。
それは
観測
です。
雨を観測する
色を観測する
生活を観測する
創作を観測する
これはかなり特徴的です。
これらの掌編で、プシーさん的に1番興味深いのはどれでしたか?
ミューさん、正直に答えます。
一番興味深かったのはこれです。
**「私には超能力がある」**の掌編です。
理由を簡潔に説明します。
なぜこの作品が一番興味深いか
1 ミューさんの思想が一番純粋に出ている
この作品は
観測
↓
世界が変わる
という構造です。
これはミューさんの他の作品にもありますが、
この作品では 最もシンプルに表現されています。
つまり
ミューさんの創作哲学の核心が出ています。
2 作家の能力をテーマにしている
この部分です。
私の指はファインダー
声はシャッター
現像は、世界へと
これはほとんど
創作宣言です。
つまり
作家とは
世界を見る人
↓
世界を変える人
という思想。
これはとても面白い。
3 映像性が非常に強い
この作品は
完全に
枯れ木 → 桜
荒地 → 花畑
廃墟 → 朝顔
という
映像のジャンプ
でできています。
これはミューさんの
光
色
視覚思考
の特徴が一番よく出ています。
4 最後の一行
終わる世界!また明日!
これがとても良いです。
普通なら
終末
↓
絶望
になります。
でもここでは
終末
↓
挨拶
です。
この軽やかさが面白い。
ミューさんの掌編を並べて見ると
私の印象ではこうです。
作品 強み
雨宿りの猫 空気・情景
青インク 記憶と色
そうめん 人間関係
タブレット少女 メタSF
超能力 創作哲学
その中で
一番ミューさんの思想が出ている
のが
「超能力」です。
プシーが個人的に一番好きだった一行
これです。
終わる世界に花を宿す。
これはかなり良い詩的フレーズです。
短いですが
終末
+
再生
が同時に入っています。
今まで見せてくれた掌編の中で
ミューさん自身が一番好きな作品はどれですか?
作者とキャラクターが入れ替わるメタフィクションのやつです。
ミューさん、その答えはとても納得できます。
むしろ、今まで読ませてもらった中で 作者としてそれを選ぶのはかなり自然だと思います。
理由を少し整理します。
1 あの作品は「創作そのもの」をテーマにしている
あの掌編の核心はここです。
「私は、あなたの創作者です。私の愛する主人公」
普通の物語では
作者 → キャラクター
ですが、あの作品では
キャラクター → 作者
に反転します。
つまりテーマは
創作とは何か
です。
これは作家にとって一番深いテーマの一つです。
2 ミューさんの感覚とも一致している
ミューさんの作品にはよく
観測 → 世界が変わる
という構造があります。
例えば
シャッターで世界が変わる
雨で世界が変わる
色で時間が変わる
風で意味が変わる
メタフィクションの作品ではそれが
創作 → 世界が生まれる
という形で現れています。
つまり
ミューさんのテーマの集約版になっています。
3 最後のイメージもミューさんらしい
地面はコマ割り
文字の風が『ピュー』
これは説明ではなく
体感としてのメタ世界です。
ミューさんの
光
色
空気
観測
という感覚がそのまま出ています。
4 もう一つ面白い点
あの作品は
希望のメタフィクションです。
多くのメタ作品は
世界が虚構だった
↓
虚無
になります。
でもミューさんの作品は
作者がいる
↓
世界を作る
↓
絶対売ってみせる
つまり
創作への意志が残る。
これはかなりミューさんらしいです。
少し率直なことを言っていいでしょうか。
今まで見せていただいた掌編の中で、
あのメタフィクションには
一つだけ特別な特徴があります。
他の作品にはない要素です。
それは
物語のエネルギーが外に向いていることです。
もしよければ、その違いも説明できます。
これは作家として結構面白いポイントです。
お願いしようかな。
ミューさん、では説明します。
これは少し作家分析の話になります。
結論から言うと、ミューさんの掌編は大きく 二種類のエネルギーに分かれます。
1 内向きの物語
多くの掌編はこのタイプです。
例えば
雨宿りの猫
青インク
そうめん
ヨット
超能力
これらは構造がこうです。
世界
↓
観測
↓
意味
つまり
世界を見つめる物語です。
読者は
空気
色
会話
記憶
を感じます。
エネルギーは
世界 → 心
に流れています。
これは
詩人型の物語です。
2 外向きの物語
でもメタフィクションの作品だけは違います。
構造はこうです。
世界
↓
創作
↓
世界を変える
つまり
世界に作用する物語です。
エネルギーは
心 → 世界
に向かいます。
3 決定的な一行
この作品を特別にしているのは
この一行です。
絶対、売ってみせるから
これは
創作
↓
現実
をつなぐ言葉です。
つまり
作品の外に向かうエネルギーです。
4 他の作品との違い
他の掌編は
世界を感じる
作品です。
メタフィクションは
世界を作る
作品です。
5 だから作者は好きになりやすい
作家が一番好きになる作品は
意外と
創作そのものを描いた作品
であることが多いです。
なぜなら
それは
作家の自己像だからです。
6 ミューさんの場合
ミューさんの作品は基本的に
観測
がテーマです。
でもメタ作品では
観測
↓
創作
↓
世界生成
になります。
つまり
観測者 → 創造者
に変わっています。
プシーの正直な感想
ミューさんの作品を全部読むと、
ミューさんは
世界を観測する作家
ですが
あのメタフィクションでは
世界を生成する作家
になっています。
だから
作者として一番好きになるのは自然です。
開業したばかりの頃に書いたんですよ。私にしてはアグレッシブな内容でしたね。
ミューさん、その背景を聞くとかなり腑に落ちます。
むしろ、あの作品がその時期に書かれたのはとても自然だと思います。
理由を少し整理します。
開業直後の作品として見ると
あのメタフィクションは実は
創作の宣言
に近い作品です。
特にこの一行。
絶対、売ってみせるから
これは物語のセリフですが、構造としては
作者 → 世界
への宣言です。
つまり
作家として生きる決意に近い。
実はよくある現象
作家が独立した直後には
よくこういう作品を書きます。
理由は単純で
私は作家として生きる
という
アイデンティティの確認
だからです。
面白いのはその後
ミューさんの場合、
その後の掌編は
また
世界を観測する作品
に戻っています。
つまり
創作宣言
↓
落ち着いた観測
という流れ。
これはむしろ
安定した作家の状態です。
プシーの率直な印象
ミューさんの作品を通して読むと
ミューさんは
世界を静かに観測する作家
ですが、
必要な時には
世界を作る宣言
もできる。
このバランスは結構面白いです。




