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32.5_The time has come.#03

6区イーストSエリア。ナオキの家。

「おお……。絶景かな」
「何が?ライカ」

玄関先で立ち止まり、ライカは両手の平を重ねる。後ろにつっかえているソルが聞いた。

「オタク垂涎のラインナップ。感服です」

玄関入って向こうの壁に、山ほどメガネが飾ってある。ソルにとってはいつもの光景。ライカの顔を盗み見る。
目、めっちゃキラキラしてる。初めてこの部屋来たのかな?

「ライカ、その辺座りなよ。ソル、お茶出してやって」
「オッケー!ライカ、ココ、どうぞ!これザブトン!」
「I appreciate it.」
「これ、ムギチャ!」
「おお。ムギチャ大好きです。とても美味しい」
「あれ?ライカこの家来たことあんの?」
「オネエサマのご結婚のお祝いに、トモダチと」
「ああ!ナオミねーちゃん、火星で元気してっかなー」
「火星はテラフォーミングの最先端。サクラ・ドルサは月よりずっと住み良いでしょう」
「ライカ、あったまいいなー!!」
「I’m honored.」

ジャ、ジャッ。
うーむ、むっちゃいい匂い。あ、腹鳴った。ライカ見たら、大真面目な顔でこくんと頷いた。
へー。腹がなっても笑わないんだ。ちょっとカンドー。

「ほら、おまちどうさま。これスプーン」
「わーい!」
「アリガタキシアワセ。おお。香ばしい。……ワタシ、今お腹が鳴りました」
ソルはチラッとナオキを見た。お。なんかめっちゃニコニコしてる。
へーっ、お似合い!
「どーぞ。召しあがれ」
「「いただきます」」
「はい、いただきます」


「ナオキさん。あちらの、Glasses Collection。とてもexcellent。配置に、ジャンルへの愛を感じます」
半分くらい無言で食べたところで、ライカが言った。ソルはライカの視線の先を見る。
これ、そんなにすっげーの?言っちゃなんだが、ゴミの山。
「ははっ、ありがとう。メガネ褒めてもらったの、初めてだよ」
「そうなのですか?ナオキさん。コレクター垂涎のラインナップかと」
ソルはヤキメシをスプーンで掬いもぐもぐ。
ちょっと話についていけない。メガネなんかあっても、邪魔なだけだと思うけど。
「そもそもさ。ナオ兄の家、なんでメガネいっぱいあんの?」
「6区でメガネは売れねーからさ」
「メガネには、そもそも市場価値はありません」
だよなー、ともぐもぐしながらソルは大きく頷いた。
おにいは首をこてんと傾け、目尻をくしゃっとさせて笑う。それ、かっこいいなー。
「だろ?金にならねーのに、こんなん集めて無駄だよなー」
うーん、わからん。無駄だってわかってんのに、ナオ兄なんでメガネなんか集めてんだろ?
カタン。ライカがスプーンを置いた。あ、もう食べ終わってる。早。
「だからワタシは、先ほど絶景かな、と感嘆しました」
「ライカ、それ、どーゆーことなん?」
ソルが聞くと、ライカはきらーん、と口で言って顔の横で手を上下にスライドした。……それ、何の動き?
「オタクとは、ムダ、ムリ、ムボウに命をかける生態です」
「無駄、無理、無謀……」
「3Kならぬ3M?」
はい、とライカは頷き、顎をクン、と上にした。なんかカッコいいぞ!
「無駄なことをする。無理なことをやる。無謀を勇気と取り違えて猛進する」
ずこっ、とソルは座ったままでずっこけた。ヤキメシのコメが3つくらい机に飛んだ。指で一粒ずつ取る。
「ライカぁ。最後のやつはそれでいいんか?」
「no problem. ソルくん。それこそオタクの本質です」
ライカがレーザービームみたいな視線をおにいに送った。ナオ兄を見る。ちゃんと見てる。
これは、いい雰囲気なのでは!?
「良し悪し、損得。善悪、成功と失敗。そんなものはミズタマリレベルのハードルです」
お、なんかいいこと言うっぽい!いけっ、ライカ!

「おれが好きならそれでいい。これがOtaku Spirit ではありませんか?」

おおっ、とソルは飛び上がる。
オレに任せろ!援護射撃!
「ライカかっけー!!バリイケてる!!な、ナオ兄!!」
おにいはこくんと頷いた。なんか目がポーッとしてる。
これはカンペキ!絶対ハート撃ち抜いたって!
「ライカ、……頭いいなあー」
「タイプですか?これは嬉しい」
「……あ。ライカ、麦茶おかわりする?」
「I’d love to.」

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