「恋ってどういう感じ?」
自室のソファで、ラジィは足をぶらぶらさせつつアメに聞いた。アメはラジィの右斜め前で、横顔のままふむ、と一度頷いた。
「ラジィは恋をしているのか?」
「わかんない。恋と好きって違うもの?」
こてん、とアメの首が傾く。虹の瞳がラジィに向いた。
「ラジィは好きなヒトがいる?」
「うん」
グレーのつま先をじーっと見つめる。プロステティックの脚は、思い通りにちゃんと動く。
「僕ね。大きくなったらレイチェルのダンナ様になるんだよ」
イイナズケ。僕がこの家にもらわれてきた理由。わかっていたけど、なんかフクザツ。
レイチェルは、すっごくかわいい。話すと楽しい。会えないとしょんぼりするし、会えたら、僕は舞いあがって、余計なことを言っちゃいそうになる。26回の洗浄が、お湯のシャワーに思えるくらい。
アメがぱちっと瞬いた。
「なるほど」
「なるほどって?」
「ラジィはレイチェルが好き」
「うん」
「しかし恋かはわからない」
「あ!そう。そういうこと」
そこが言いたい。いつもアメは、僕が言いたいことをずばっと言葉にしてくれる。
好きと恋って違うもの?わかんない。
「リックお兄ちゃんは、雲の上を走って会いに行きたい、って言ってた」
「なるほど」
「僕、レイチェルに走って会いに行きたいかなあ?」
「ラジィは、走ることが好きだろう?」
「うん。でも、走るよりクルマの方が速いでしょ?」
「ふむ」
アメは顎に手をやり、ほんの少し首を前に傾けた。
「アメ、何かわかった?」
「そのリックの言う走る、の定義は、おそらく速度のことではない」
アメの瞳に内包された細い傷が七色にきらめく。高速演算モードだ。
「つまり、恋は衝動、ということなのでは?」
しーん。僕は腕組みをして大きく首を傾ける。アメの瞳が僕の動きをじーっと見てる。分析中かな?
「うーん、よくわかんない。アメ、わかる?」
「ボクには、恋の理論はわからない」
「そーだよねー」
恋の理論。恋の先生って、どこに行ったらスカウトできるんだろう?
アメはウィン、と首を水平に動かした。お、なんか思いついた?
「レニにも聞くというのは?お互い恋をしているのなら、その相違点は参考になる」
なーるほど!リックお兄ちゃんの答え合わせができるんだ!
「そっか!明日聞いてみる」


