「ただいま、モリー」
甲高い金属音とともに開くドア。角度をミスった。開け方にコツがある。
壁際に佇むモリーは、いつものようにニコッと笑った。照明をオン。レニは冷蔵庫に直行する。今夜はライム・フレーバー。錫のグラスにたっぷり注ぐ。
稽古の後、ラジィと一緒にジェンのアイスクリーム屋に行って、ラジィはメロン、レニはオレンジのアイスをコーンで食べた。
「ラピのローラースケートいいなー」
「でしょ?」
「僕もやってみたい」
「ぼっちゃまか奥さまに、お願いしたらどうかしら?」
「ダメって言いそう。わかんないけど」
「そうなの?」
「ジャンに聞いてみようかなー」
「そもそも、このローラースケートどうしたの?」
「それ今聞く?レニ、何回来てたっけ」
「聞きそびれてた」
「えーと、貰ったの。というか、付けてくれた」
「ん?誰に?」
「わかった!バニラアイスのお兄さんでしょ?」
「ああっ、ラジエルさま!」
「バニラアイスのお兄さんって?ラジィ、詳しく話してくれる?」
「うん!ほら、工事に来てた人。毎日バニラアイスだけ買いに来てた」
「バニラアイスだけ?」
「バニラアイスだけ」
「チョコレートは?」
「ないよ」
「ストロベリーは?」
「それもない。僕、バニラしか食べてるところ見たことない」
「ウィンターウェザーでも?」
「うん」
「サマーウェザーでは?」
「3段にしてた。僕もあれやりたいなー」
「お腹壊すよ」
「へー。その人カッコいい?」
「うん!強そう!」
「ラジエルさま、そのへんに……」
「はーい」
「ジェン、どーなの?」
「え?」
「イケメン?」
「あんまり。マッチョで、無骨で、野暮ったい」
お髭もあるし、とジェンは腰に手を当てぶつぶつ呟く。
「……でも、あたしより背が高い」
ジェニー真っ赤!とラジィが言って、ラピが隣で頬に手を当てニコッと笑った。
ナオミもジェンも、好きな人ができたみたい。
恋って、どんな感じかな。
ライムの香りが鼻から抜ける。錫のおかげで角の取れたまろやかなウォーター。明るいリビング。微笑むモリー。
「明日も仕事。今の私はそれでいいや」
部屋着ではなく、パジャマに着替えて今日は寝よう。その前に。
"Mory, Refill.”
“With pleasure. Leni.”
Mory stands and does twirl.
The arms layers on the chest.
“It’s Music For Cats.”
Meow with the strings.


