「モリー、ただいま」
照明をオン。明るい部屋でモリーがレニにニッコリ笑った。
レニはディバッグから包みを取り出す。くしゃっとした和紙の中から、錫の器が現れる。
「これ、どう?ビゼンがくれたんだ。水が好きなお嬢さんへ、って」
ビゼンに随従していたジュエレッタは、オパール・ガール。その一部から制作された、容量200mlほどのタンブラーである。
月と地球を行き来する際には、様々な規定がある。月から地球への渡航は高額かつ1000項目以上の審査もあって民間人には厳しいが、地球から月へは比較的安価で規定も緩い。ビゼンの言では、「場所にもよるが、地球の海外旅行よりも安くて楽」に月に来られるらしい。
それでも、貴金属の持ち込みに関しては、非常に慎重である。金継ぎに使う金や銀、プラチナは持ち物検査を通らない。
だからビゼンは、人一人分のチケットと座席を確保してジュエレッタを連れてきた。
オパール・ガールのボディは tinー錫ーでできている。
『ウパラのボディを少し溶かして、彼女に継ぐ』
帰る時には、オパール・ガールのヒップは少しスリムになった。宝石も人間も、皮膚の移植は同じ所を使うんだな、と感心した。
「あまり屑でよければ、だって。ニホンジンはオクユカシイね」
錫の器は、水が美味しくなるらしい。ボディーガードのお礼だそうだ。ファンだと名乗る少年が3人(一人は顔見知りだった)が現れたので、レニが追い返しただけのこと。その分は時給と別に、きちんと計上されていた。
「フローライトはまた光ったよ」
フローライトの左目は、錫に変わった。
右目と時間差で、錫の継ぎ目も光を宿す。店主はフローライト・ガールの手を取り、宝石少女はくるりとターン。翻るヴェールの衣服に、錫の線が冴え光る。
「傷が流れ星みたいに輝いて。綺麗だった」
綺麗な仕事だった。とても。
“Refill, Mory. The star song.”
Mory stands.
Copper hands open both face sides.
“Twinkle, Twinkle, Little Star.”
“Falls your dreams.”


