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35_ My moon.#02

土曜日午前10時。
ホワイト家中庭。

「You’re good then before.」
「スイカ、ほんと?」
「Yes.」
ラジィの土曜は、午前中の45分間をカテゴリ”Run ”のジュエレッタ、愛称スイカとかけっこのレッスン。あとは1人で適当に過ごし、12時にやって来るリックとお昼ご飯を一緒に食べて、2時間くらい勉強する。
問題が簡単だから、半分くらいは雑談してる。アメもいたら楽しいんだけど、自室でおしゃべりは、ジャンがいる時じゃないと駄目だって。カベニミミアリショージニメアリ、ってジャン言ってたけど、ショージとメアリって誰かな?今日、リックお兄ちゃんに聞いてみよう。
ラジィは、中庭にごろんと仰向けに寝転がる。ドームの空が青い。地球の空は、青の感じがやっぱり全然違うのかな?それとも、同じだったりして。
にょきっ。
両脚を持ち上げた。お腹の力がついたみたい。灰色の脚は、今ではすっかり自分の脚って思うけど。
「この脚もうすぐ取っちゃうんだよなー」
「Why?」
スイカが立ったまま、腰を90度くらい傾けてラジィを見下ろした。正式名称はエルバイト・ガール。見た目は13歳くらい。赤と黄緑の髪の色がスイカに似てるから、スイカ。
スイカは、ちょっとだけおしゃべりできる。ジャンもレニもいなくても、トレーニングができるってわけ。
僕は身体を起こして、伸ばした膝をこん、と叩く。痛くないけど音がした。
「もっと丈夫で、速く走れる脚にするんだ」
「It’s good.」
スイカがにこっと笑った。両目をぱちっと閉じる笑顔、ちょっとジェニーに似てるかも。
「スイカありがと。人間は、あまりそう思ってくれないんだ」
「Why?」
「かわいそうだから」
「Why?」
「わかんない。脚が今より無くなっても、たくさん走れる方がいいよね」
「Yes.」
僕は立ち上がってスイカを見上げる。スイカの方がリンゴ1個分背が高い。
「スイカは、なんで走るの?」
「My category is Run.」
そりゃそっか。
「えーと。スイカは走りたいの?」
「Yes.」
「あ、そうなんだ。どうして?」
スイカは右手を腰に当て、左手の拳を左胸に当てた。人間だったら心臓の位置。
「No running, No life.」
「ふーん。そっか!」
走らなければ生きていない。
なるほどなあ。
じゃあ、僕は?
走らなくても、いつもちゃんと息してる。
うーーーーん。
「僕は、どうして走るのかなあ」
「You can run.」
「走れるから?うーん、でもさ」
そういうことじゃないのはわかるけど、なんだろう。

ーー走って会いに行きたいくらい、大好きってこと。

リックお兄ちゃんが言ってた。
「僕、走って、どこに行きたいんだろう?」
走って行っても、レイチェルに会えるわけじゃないし。多分ずっと、お姫様抱っこもできないし。

電気蝶が通り過ぎた。名前はギフチョウ。春の女神だって、リックお兄ちゃん言ってたっけ。

「僕、レイチェルと今すぐ結婚できたらなあ」

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