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24_ White Coal#02

「ジャン!見て!」
庭園スペース。ラジィは1週間ぶりに会うジャンに、合気道の型である入り見、そして転換を披露した。
今日の2層はスプリング・ウェザー。動作が終わると、うっすらと汗をかいていた。シャツが背中に張り付いている。
バチパチパチ、と白手袋越しの拍手。ジャンは顔をくしゃっとさせてニコニコしていた。
「素晴らしい。鍛錬されましたな。ラジエル様」
「レニのおかげ!わかりやすいし優しいんだ。厳しいけどね」
「理想的な教え手でございます」
嬉しくなって、ジャンの腰にぎゅーっと抱きつく。離れてたのは数日ぶりってだけなのに、お香の匂いが懐かしい。
「ねえ、ジャンは? 色んなところでカンフー教えているんでしょ? 強い子は?」
ジャンがラジィの肩をポンポンした。
「ほっほっほ。時、場、人によりけり。スジがいいものは、基本ができれば自分で勝手に強くなる」
「1人でも練習するから?」
「それもあります」
電気蝶がひらひら横切る。温度感知システムが、スプリングの陽気をキャッチしたらしい。
ジャンは、同じコースを飛行する蝶を見たまま口を開く。
「しかし、それだけではありません。大切なのは、心を預けることですな」
「心を預ける?」
はい、とジャンは深く頷いた。片膝をつき、ラジィと視線を合わせてくれる。
「今。を、出し惜しみせず使うことでごさいます」
「それが、何かトクベツ?」
今に全力。普通のことだと思うけど。
「はい。無我といいます。いわば、その瞬間に自分を空にし、精神が、ただ肉体の容れ物になること。これが、なかなかに難しい」
「うーん?」
言葉だけでは、あまりよくわからない。
「ラジエル様は聡明でございます」
ジャンが立ち上がり、膝の芝生をパンと払う。何気ない仕草だけど、すごくかっこいい。
「あ、レニは?」
ジャンは両目を糸のように細めて笑った。
「レニ殿は、それを呼吸のようになさる。だか
らジャンは、スカウトしたのでございます」
にゃーん、と庭のどこかで鳴き声がした。これはクロ。クロはお庭、ミケは廊下、シロは棚の上が好きなんだ。……ん?
「もしかして……。少し前にクロシロミケがしょっちゅう脱走してたの、ジャンのしわざ?」
ジャンは、今度は片目だけを細めて笑った。イタズラが見つかった男の子みたいな顔、とラジィは思った。
「ほっほっほ。全くもって、ラジエル様は聡明にございます」

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