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14_幼年期の終わり#03

お墓みたいな場所だなあ。

僕の感想。初めてサロンに案内された時のこと。
「好きに出入りしていい。ジャン。ラジィのこと、頼むよ」
「はい。ぼっちゃま。ラジエル様、こちらのお部屋のロックは私がお預かりしております。ウォッチでお声掛けください」
「わかりました。ありがとう」
ジャンは執事長で、カッコいいおじいちゃんだ。カンフーの達人で、時々ショーに呼ばれるらしい。人間なのにすごい。
ラファエルとマリアンヌは、ジャンを僕の教育係に任命したらしい。身体の動かし方を習うのがいいんじゃないかって。確かにね。名案。

ジャンは寡黙だけれど、聞いたことには丁寧に答えてくれる。

「おじさまたちは、どうしてジュエレッタをたくさん買うの?」
「ステータスでございます」
「へえ、そういうもの?」
「異星への贈り物としても、一目置かれますゆえ」
「うん。そうだね」
ジャンは、僕にジュエレッタたちの名前とオプション、購入年月日を一体一体起動して説明してくれた。


Product Name: Elbaite Girl

Flavor: Sweet and fresh
Polishing form: Healthy
Emotion Content: 68%
Raw Ingredients: Molybdenum and Elbaite
Voice tone: Pop
Category: Run

Serving Suggestion:
Room Temperature in the refresh night

「この子、走るの?」
「左様でございます」
「どこを?」
「そのへんを、でございます」
「ええ?この部屋?狭すぎるよ」
僕がサロンを見渡し言うと、ジャンがくしゃみしそうな顔になった。くしゃみを待ったがしなかったので、僕はどうしたのか聞いた。
「内緒でございますよ、ラジエル様」
「喋る相手がいないから大丈夫」
「これからいらっしゃるジュエレッタにも、でございます」
「お、うん!わかった」
ジャンは片膝をついて、白手袋の右手をひげのあたりに当てた。
「少し前に辞めた侍女が、ラジエル様と同じことを申しておりまして。ジャンは驚いた次第です」
「ふーん、なんで辞めたの?」
「これは言っていいものか……」
「僕、口がカタイんだ。コランダムくらいにはね」
「絶妙でございますな」
ジャンは僕の耳元に顔を寄せて、囁き声で言った。
「ブタになる、と申しまして。ブタというのは……」
「知ってる、地球のカチクだね」
「ラジエル様は聡明にございます」
ジャンは立ち上がり、後ろに両手を組んで微笑んだ。
「その人、それからどうしたの?」
「よく働く娘さんでしたので、別の仕事に紹介しました」
「ジャンはいい人だね」
「執事ですから」
僕らの会話を、椅子に座ったエルバイト・ガールはスイカ色の瞳に映して微笑んでいた。

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