14_幼年期の終わり#02
ターコは火星に行ってしまった。
ターコイズ・ガールは、6歳の誕生日の、両親からの贈り物だった。大きな円柱形の水槽と一緒に、僕の部屋の中央に現れたジュエレッタのオプションは”Swim”
ターコの踵には、大きな宝石があった。
水から出したら、立てないし歩けない。歩行機能のオプション追加は、ほとんどのジュエレッタで可能だけれど、ターコだけは無理なんだ。
だから、選ばれた。それを見て、僕が満足するように。
くそったれ、って思うよ。今でも。ぐちゃぐちゃにすりつぶされた悪意だ。いくら息子思いの親のパウダーでトッピングしても、こんな欺瞞は飲み込めやしない。
それに、そんなに簡単なことじゃない。
僕は2年ターコと過ごした。水槽の中にゆらゆら浮かぶ綺麗な女の人に向けて、僕は色々と話した。
どこから来たの?
何を見てるの?
寒くはない?
ウミを知ってる?
ここから出たい?
僕は、別にどこに行きたいわけでもなかった。
僕には、やりたいこともなりたいものもなかったから。
部屋から出られず、ターコと過ごすだけの日々。
別に虚しくもない。
ウォッチがあるし、ライブラリ・スクリーンもある。知りたいことはなんでも知れたし、見られた。
ターコと一緒にウミを見た。
ソラも。
モリも。
トリも。
ツキも。
それで、別に良かった。執事さんたちは無口だし、両親は僕に無関心だったから。
僕の世界は過去で、虚構で、生産性のないものだった。それで良かった。
未来は遠い。僕の脚には。
息子の脚を治すか交換することくらい、簡単にできたんだ。ジュエレッタのオプションよりも、少し高いくらいの手術費。それをしなかったのは、勝手にどこか行かれては困るから。
子どもが勝手に行くところなんて、2層のどこにあると思っていたんだろうか。今になっても謎思考。多分、子どもが嫌いな親だったんだろう。
両親は死んだ。その夜、僕はトリを見た。
“Why don’t you listen to a mermaid song?”
ターコは火星に売られちゃったけど。
今でも僕は、聞かなくて良かったと思う。
“Mory sings me home.”
モリー。歌うジュエレッタ。
「あの人の名前を聞いておけば良かったな」
金の鳥のお姉さん。笑い方がカッコよかった。


