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32_リバーサイド・レコード#03

週末土曜日午前10:30。

セントラル・ターミナル。
タワー出入り口付近改札前。

「リック。あれ、ライカじゃね?」
「え?……あ、ほんとだ」
ライカだと認識するのに時間がかかった。ファッションの固有記号が丸ごと更新されていたためだ。
大学ではブラウス、セーター、ベージュのキュロット・スカート、三つ折りソックスにローファーが定番で、色味やデザインがマイナーチェンジするくらい。定番のお嬢さんスタイル。髪を縛ったところも、見たことがないくらい。
今日は長めのボブの赤髪を、首の後ろで飾り気のない雰囲気で一つ結びにしている。
白地に蛍光グリーンのプリントTシャツと、スタンダードなストレートジーンズ。リュックサックは黒のナイロン。スニーカーはショッキング・ピンク。
派手で個性的だが、機動力の高いカジュアルなファッション。リックは、ライカのチューニングに感心した。
「おーい!ライカ!」
ピッポがライカに駆け寄った。ヘーゼルの瞳が大きく見開き、笑顔になる。明るく快活な印象。
「お二人とも、コンニチハ。今日はよろしくお願いします」
ぺこん、と頭を下げるライカに2人も会釈。
「ライカ、ジーパン?似合うなー。初めて見た」
ピッポが早速服を褒める。ライカは額にピシッと右手を当てた。敬礼のポーズ。
「本日のドレスコードです。視界も良好」
「ボーイッシュで雰囲気違うなー。いつものやつよりダンゼンかわいい……」
「それはどうも。ポッポくん」
「ピッポな」
ライカの調子が男子みたいに気安く感じて、リックはなんだか気楽になった。
「ほら、2人とも行くよ」


土曜日午前10:50。
イーストS-3ステーション。

「やっほ、リック。ピッポ」
「レニ!」
改札前にレニがいた。すっと立った姿勢が綺麗。今日は髪を首の後ろで一つ結びにしている。ジーンズと赤白のスニーカー。ポロシャツは初めて見る赤い色。
3人が近づくと、レニはライカに微笑んだ。
「ライカ、久しぶり。今日の服ステキよ」
ライカはぺこん、と頭を下げる。レニは少し膝を折ってそれに応えた。
「いつぞやは大変お世話になりました。レニさん、相変わらずお美しい。北欧神話のイズンのようです」
「あ、知ってる!リンゴの神様」
「おお。お詳しい」
「神話の本を読んだの。オオカミって大きいのね」
「ハイ。そして、馬は脚が8本あります」
「すっごく強そう!」
「ハイ、チートです」
女子の会話を、少し離れて見る男子たちという構図。大学ではよく見るが、まさか自分の身に起こるとは、と不思議な心地でリックはピッポと顔を合わせる。
ジェンといる時もそうだったけど、ライカと話すレニの面差しはいつもより茶目っ気があり幼く感じる。
なんか、元気な子猫を見ている感じ。
「くっそー、ライカに先を越された。レニさん褒めるの俺の役目」
「いや、僕だよ」
あ、話がひと段落したっぽい。リックはレニに駆け寄った。
「レニ!今日は日向のソマリみたい」
くりん、と菫の瞳が丸くなる。ほんの少し、首が左に傾いた。
「ソマリって?」
「猫だよ。目がクリクリしてて元気いっぱい」
レニはああ、と笑って右手の指を自分の右肩に乗せた。
「このシャツを褒めてくれてる?おニューなの」
すっごいなあ。レニには、なんでわかるんだろう。
「うん!すごく似合ってる」
「そう?少し派手かと思ったけど、良かったわ」
ピッポとライカが2人の間ににょきっと出現。
「レニさん、暗号解読さすがっす」
「もはや夫婦漫才です」
レニが右腕を大きく広げた。手のひらの先には、6区の街並み。駅前のあちこちに、エアバイクや人力自転車が停車している。

「ようこそ、6区イーストへ。ライカは私の隣を歩いて。ナオミの家に案内するわ。ナオキの家でもあるけどね」

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