27.5_時計仕掛けのオレンジ#03
あ、いた。見つけた。
大学構内メインストリート。図書館に入っていくライカを見つけ、リックは急いで駆け寄った。
「ライカ、少しいいかな?」
「ふぇ?リッ!リリリリリリリリ、リックくん!?ワタシに何かご用ですか!?」
あたふた、あわあわ、右往左往、という言葉がリック脳内の語彙リストからポップアップ。ボリュームマックスのライカの声に、通行人が立ち止まったり振り向いたりした。
うーん、目立ってる。
「うん。あのさ、君が1人で6区に行ったって聞いた。ほんと?」
気を取り直してリックは聞いた。どうしても確認したいことがある。
「えっ!えーっと……、……はい」
ライカは素直だ。裏表がなくて感情が全部そのまま顔に出る。そういうところが男子に人気の理由だろう。
男子学生の視線が痛い。リックは単刀直入に切り出す。
「その時、誰かに助けてもらった?」
「はい!ワタシ何も知らなくて……。怖くて駅までついてきて、ってお願いしたところ、なんとセントラルまで送ってくださいました。とても助かりました」
「その人の名前ってわかる?」
「はい、……あ!うぅ、えっと、その……」
ウェットなヘーゼルの瞳が、めいいっぱいに見開かれる。
「ライカ。教えてくれる?」
「うぅ…………」
リックは自分の鼻先で、両手をパチンと合わせた。ライカは自身の両手を胸の上で握りしめる。
「お願い。ね?」
握った指の関節が白い。唇がきゅ、と一直線になる。
やがて、へにゃっと口が開いく。ライカは背筋を伸ばして言った。
「……はい。レニさんです」
やっぱり。そんな気がした。
ピッポは時々、理由はわからないがリックにライカの話を持ちかける。今回のライカの件は、タイミングとして自分に起因した行動であった確率が高い。
レニは、こういうことを自分から言わないから。ライカ本人に確認できて良かった。
リックは一歩後ろに下がった。さりげなくしかし確実にギャラリーが増えている。小柄なライカに、背中を丸めて視線を合わせる。
「教えてくれてありがとう」
「いえ、リックくん……、あの!ごめ」
「忙しいのに、時間取らせてごめん。じゃあね」
手を振り、ストリートを走る。ライカの声が聞こえた気がしたけれど、次のコマまであと4分。教授は時間に超シビア。遅刻するとかなりまずい。走るスピードを上げた。


