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28.5_チョコレート・パフェ

6区イーストGエリア。
老舗喫茶"ルール・ドゥース"にて。

「ナオキさん。一口、オメシアガリになりますか?」
「……へっ?」
窓際2番テーブルソファー席。机の上にはガラス製のパフェ・グラス。チョコレート・パフェの中身は残り3分の1。
ライカはパスタスナックのような持ち手のロングスプーンで、ぱくっと一口。いい笑顔。
ライカは、もう片方の手で向かいの喫茶店を指差した。
「先ほどから、窓の外ではなく、こちらをご覧になっています」
「あっ!ぼーっと見てた。……女の子がもの食うところじーっと見るとか、ほんとごめん! ノンデリだよなー」
ナオキは右手を顔の前に立て会釈した。姉からもレニからも散々言われていることであるが、こういうところがモテない理由の大部分だという自覚はある。
ライカは気にした風もなく、再びスプーンを口に運んだ。にぱっ。
変な空気にならなくて安心した。にこにこしてるが、この子失恋したんだもんな。聞いた話だと5年も片思いしてたとか……。笑顔で家に帰れるようにしてやりたい。
「こちらのチョコレート・パフェはなかなかの逸品。とても美味しいです」
「うん。見てたらわかる」
「食べたいから見ていたのでは?」
「ははっ。そうじゃないよ」
キョトン、と見つめる瞳の色はヘーゼル。あったかみのあるナッツの色。
「すげーうまそーに食ってるからさ。かわいいなーって思って」
ダテメガネも似合ってたけど、ガラス越しよりずっといいや。
「……そうですか?」
「うん。にこにこしてて、こっちも腹いっぱいになる」
「……アリガトウゴザイマス」
「ゆっくり食べてよ。僕、あっち見てるから」
「……」
ぱく。
カツ、カコココ。
ぱく。
カツ、カコココココ。カッ。カッ。
「はい、どうぞ」
「……へ?」
顔を向けると、山盛りスプーンが目前に迫っていた。
「えっ? 別におれ、食べたいわけじゃ……」
「コーンフレーク、生クリーム、チョコレートソース、キャラメルソース、クラッシュ・ピーナッツ、チョコクランチ、スポンジケーキ……。
底のところの、一番美味しい最後の一口を集めました」
「へー。色々と入ってんだなー」
ずい。
「はい、アーン」
「いやいや、チビッコじゃないんだから……」
ずずい。
「ハイ、アーーン」
「……えーと」
「アーーーーン」
ずずいっ。
「…………えーと、その、スプーン同じだし」
背もたれに背中が完全にくっついた。これ以上後ろに下がれない。
「ナオキさん。アーーーーーーーーン、です」
ふと見ると、ライカは腕をいっぱいに伸ばして机に片膝を乗せている。
そ、そこまで?
…………えーっと。……これ、どうしたら。
「おいナオキ! アーンをいつまで待たしてんだ? 男見せろよー」
「ええっ!? ……え、じ、じゃあ」

ぱくっ。
もぐもぐ。
ごくん。

「どうですか?」
「……へへっ、うめー」
ライカがこくんと頷いた。満面の笑み。元の位置にすとんと座る。
「激しく同意です。マスター。こちらのチョコレート・パフェ、とてもdelicious。味のバランスperfectです」
「おうサンキュー!お嬢さん、いつでも来いよー。次は裏メニューのデラックス・チョコパフェ作ってやる」
「おお。これは嬉しい」
マスターがお冷を二つ持ってきた。氷がたくさん入っている。メニュー表のウォーターはプレーン150ルカ。追加料金はない。大・大・大サービスである。
「一人はあぶねー。ライカちゃん、こっち来る時連絡しなよ。これ僕の名刺」
「アリガタキシアワセ」
「あっはっは! そんな大層なもんじゃねーけど。ま、6区でなんかあったらそれ見せな」
「なるほど。ニフラムですね」
「そんな古いゲーム、よく知ってんなー。ま、そういうこと」
「こちらはワタシのアドレスです。ナオキさん、ご登録をオネガイシマス」
「オーケー。連絡くれたら駅まで迎えに行ってやるから、あんまり一人でうろうろすんなよ」
「Noted.」
ライカは頷き、渡した名刺をポップアップしじっと見ている。
ナオキは水のグラスを手に取って、中の氷をガリガリ噛んだ。

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