top of page

「レニー!」

「キャシー!ここよ!」

月曜16:00のセントラル・ターミナル惑星線改札口。

スーツケースを引っ張って手を振り駆け寄るキャシーの身体を、レニはドシン、と受け止めた。なかなかの衝撃。相変わらずの身体能力。

「結婚したってカーから聞いたわ。おめでとう」

キャシーはにかっと笑った。

「へへっ、ありがとう。昨日やっと籍入れたんだ」

「どんな人?」

歯を見せた明るい笑顔。頬がポッ、と赤くなる。

「同い年。童顔。私よりチビ。でも彼、むちゃくちゃ強いんだ」

そういえば、同業者ってカーが言ってた。

「強いって、どのくらい?」

「私をお姫様だっこして、銃弾の雨を逃げ切れるくらい」

「最高ね」

「うん!」

歩き出す。歩行に合わせて、スーツケースの車輪がガラガラ鳴る。

「生きてまた会えて、本当に嬉しい」

「私も!レニも結婚するんだって?カーおじに聞いたよ」

レニは右手のひらを上に向け、肩を竦める。

「カーは私の親戚のおじさんかしら?するとしても、先のことよ」

「ベビーは?」

ぴた。ガラガラ、ぴた。……すたすた。

「……そういうの、まだなの」

「へー。早い方がいいよ」

「そうよね」

ガラガラガラガラ。ガン、ガラガラ。

「うん。戦闘員じゃなくっても、人間なんかいつ死ぬかわかんないもん。確かなことって、今しかないからさ」

ぴた。ガラガラ、ぴた。

「The time has come.」

「時が来た?レニ、なんの?」

ズザッ!きらん。

「彼に、お泊まりを申し込む」

……パチパチパチパチ!

「おおー!てか、まだだったんだ。え?付き合ってどのくらい?」

すたすた。ガラガラガラガラ。

「半年になるかな」

「長っ!彼、忍耐強いねー。どんな人?」

レニは右手の人差し指で髪の毛先をくるくるする。

「私にとても優しいの。かわいくて頭が良くて、走る姿がかっこいいわ」

キャシーがぴょん!と飛び跳ねる。キャシーのブーツの踵が、床から50センチ離脱した。

「あははっ!ゾッコンだね!」

「ふふっ、キャシーは?」

「決まってるじゃん、大好き!」

「いい人なのね」

「あいつ、死んでも死なないもん。まーじーで!強すぎ」

ウィン。自動扉の外はオータム・ウェザー。光の温度が柔らかい。

「キャシー。ご飯、何食べる?」

「前のお店美味しかった!」

「じゃ、そこにしましょ。明日は早いし、今から行く?」

「行く!ランチ食いっぱぐれて、お腹ペコペコ!」

レニはウォッチを起動し、15分後に店を予約。2人の足でおよそ8分。方角を示し歩き出す。

「私、3時起きとかできるかなあ」

「私がいるから大丈夫。家の壁を死守して、時間きっちり現地にキャシーと到着するわ」

「あははっ!レニと仕事するの楽しいなー」

「私もよ。でもキャシー。バズーカなんか、月でよく許可されたね」

「カーおじ、最近イケイケなんだよ。どさくさに紛れて、なんか色々ぶっ壊せって」

レニはちらっとキャシーのスーツケースに視線を送る。115Lの特大サイズのアルミのケース。機内持ち込みNGサイズだ。どうやって手荷物検査を通過したのだろう。マザーの特例許可だろうか。

「工事が増えるね。予算が余ってるのかしら」

「破壊任務は安全で報酬いいから助かるなあ。バズーカ一個でできるしさ」

ターミナル周辺は旅行客が多い。それぞれのスーツケースやボストンバッグを携行している。運搬手段は浮遊台車がメイン。キャシーのガラガラはものすごーく目立っている。

「そうね。火星では戦闘任務が多いの?」

「そっちがメイン。ナチョとはそれで出会ったんだ」

戦地の恋。字面はロマンチックだが、2人とも生き残ったからなんだよなあ、とレニは思った。

「夫婦で出撃することもあるの?」

「そだよー。昨日も一緒の任務だったんだ。帰りに役場に寄って籍入れた」

火星はいくつも紛争地帯があるから、戦闘員は戦場での任務がメイン。観光都市の月とは、戦闘員でも仕事の種類が違うのだ。

「バディは、これからもっと増えるかも。ナチョの隣で戦える人、他にほとんどいないからさ」

「強いのね」

「太陽系最強」

「……もしかして、ナチョって愛称?火砲の死神イグナシオ?」

「そーゆーこと!」

「すごい。実在したんだ」

「あははっ!そうだ、レニ。モリーは元気?」

「ニコニコしてるわ。リフィルをお任せすると、ラブソングを歌うの」

「へーっ!聴きたいなあ」

「帰ったら一緒に聴きましょ」

赤い看板。店が見えた。

「キャシー、何食べる?」

「お肉!」

「私もお肉の気分。ステーキね」

「やったー!」

36_虹色レイヤー#05

白(透過背景) .png

隐私政策

Cookies政策

© 2025 μ 使用Wix.com创建

bottom of page