Pipipi.
“Karr, Hold on. 仕事の電話。少し待ってて”
「わかった」
“Sorry. ……yeah. What kind? What time?…Um.…… . Roger that”
気がつくと、路地まで歩いてきてしまった。レニは踵を返して歩き出す。
「いてててて!ってレニ!?」
「メガネに目がないのね。ナオキ」
「こんなビンゾコメガネ初めて見たから、つい」
「ビンゾコメガネ?」
後ろ手に締めた手を離す。ナオキは前につんのめり、たたらを踏んで神妙にレニに向き直る。差し出されたメガネを、レニはリックに丁重に返した。
「とにかく、またもごめん。君の客とは知らなかった」
リックがさーっと青ざめた。
「客…?」
「ボディーガード中じゃないわ」
「ああ、そっち系」
「今日はオフなの。彼に街を案内してる」
「あ!!あー、そういう……、ほんとごめん!!デート中とは知らなくて」
声が大きい。本当に。ナオキってやつは、ルックスはハイレベルだし生活力も美学もあるが、なんというか。うん。こういうところだ。
「ナオキ。デリカシー発動して」
「ごめんまじで。レニにせっかくできた彼氏なのに……。今度奢る。じゃ」
ひし、とリックがナオキの腕を掴む。
「ちょっと待って。2人はどういう関係?恋人?」
思わずレニは吹き出した。
「まさか。3歳からの幼馴染」
「タイプじゃないし」
「なんですって?」
今日のナオキは失言のオンパレード。ホールドアップで後退り。
「やべ、おれ帰る。えっと、君の名前……」
「リック」
「僕はナオキ。これ名刺」
このタイミングで、ウォッチのアドレス交換する?リックは素直に応じているし。
「セカンドショップ?何売ってるの?」
「ガラクタばっか。そのうち来いよ」
「オーケー、ナオキ」
「リックごめんな、デートの邪魔して。この通り。良い一日を。レニのこと、よろしく頼むよ」
「もちろん」
「ねえ、何の話?」


