「背が伸びたよね。キャシー」
5区観光街のレストラン。オーダー後、ジュースで乾杯をしてからレニは言った。
「6センチね。今156センチ」
「髪も伸びた」
「癖毛で手こずるんだ」
「大人っぽくなったわ。服もシック」
数ヶ月ぶりに会ったキャシーは、かなりのイメージチェンジをしていた。以前の駄菓子みたいなポップで原色系のファッションではなく、ジージャン、ホワイトTシャツ、レザーのホットパンツと膝丈のミリタリーブーツという出立ち。メイクは黄色のリップだけ。
アイスグリーンの目立つ髪色でなければ、待ち合わせに時間がかかったかもしれない。ただ、口を開くと前の通りで、レニはなんだかほっとした。
「へへっ。……この間まで、恋してたからかなー」
そんな気がした。ウエイターがサラダを置く。白いドレッシングのかかったレタスとコーン。
「どんな人?」
キャシーは、小皿に自分の分を取り分けた。トングを受け取り、レニも自分の分をよそう。
「あたし、3回、男と付き合ったことがある」
フォークでレタスをざくざく刺して口に運ぶ。レニも食べた。香りが乏しく水分ばかりのレタスは、ドレッシングのおかげだろうか。それなりに美味しい。
「火星の人、ガニメデの人、この間は星間移民船の人」
でもね、とキャシーはフォークを噛む。黄色い唇がへの字に曲がる。
「あんまり顔は覚えてない」
お待たせしました、とウエイターが今度はパンを持ってきた。もちもちとした白いパン。手に取ると、焼きたてらしくまだ熱い。
キャシーはパンを大きく千切り、口の中に放り込む。手が自然とグラスに伸びて、咀嚼の途中でグレープフルーツジュースを飲み干した。
「この間のスイーパーの年下なんか、最後の言葉が何だと思う?死神のキスってミント味なんだー、だよ」
レニもパンを千切って食べる。小麦の味があってちゃんとする。ウエイターが、今度はスープを運んできた。トマトの入った、少し辛くて赤いスープ。
「死亡フラグなら、もっといいのがあるじゃんか。戻ってきたら結婚しよう、とかさ」
キャシーはスプーンを上から持って、立て続けに3回掬ってスープを飲んだ。
「そうだね」
スープは、自然な酸味でとても美味しい。レニが半分も食べないうちに、キャシーの器はすっかり空だ。彼女はウエイターを呼び止め、ドリンクのお代わりを注文した。
はあ、と大きく息を吐き、キャシーは背もたれに体を預け天井を見た。視線追うと、光らないシャンデリアが微動だにせずぶら下がっている。
「みんな、好きになってもすぐ死んじゃう。ルーの顔も、笑った時のかわいい八重歯も、きっとすぐに忘れちゃうんだ」
ビーフステーキシャリアピンソースでございます、と焼き音を立てる鉄板がテーブルに2つ置かれた。レニは中央にあるカトラリーの籠を押す。
「メインが来たよ。食べよう」
「うん」
ジュウジュウ焼けるステーキに、キャシーはフォークを突き刺した。


