top of page
「ただいま、モリー」
灯りの無い部屋で、モリーは私を見上げ微笑む。
昨日、新しい椅子を買った。樹脂ではなく、本物の木でできた重いやつ。
冷蔵庫をオープン。青白い光に目を顰め、ウォーターを取り出す。
仕事前に冷やしておいた。フレーバーはモヒート。
うん、爽快。
ボトル片手に、モリーの真向かい斜度45度あたりに椅子を置く。
背もたれを前に。横向きに座り肘をつく。
あの少年は、わかっていたに違いない。
自分の未来も。ジュエレッタの未来も。
彼は縁者をたらい回しにされる。
ジュエレッタは転売される。
"I’ll pass."
それでもいいと彼は決めた。
彼らの未来はよく似ている。
いや、そもそも彼らは似ていた。
ほとんど同一といっていい。
あの水槽が、鏡写しに見えるほど。
命を見出した?
いや、違う。
自由を、境界の向こうに見た。
境界を越えれば生きられない。
眼差しだけが自由を追う。
モリーの双眸は私の横顔を映している。黒水晶が温度を宿すように思えた。
“Refill. Song of the sea.”
Mory stands.
Copper lips open.
The voice is rippling.
Ballade.
02_人魚の踵 #04
bottom of page


