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銃撃の音。
破壊音と共に扉が開く。
"Don’t move.”
ハスキーな声は女性。逆光のシルエットはしなやかだ。
1秒。2秒。3秒。僕は聞く。
「殺さないの?」
彼女は構えをとき、空薬莢を床に捨てる。
「私は子どもは殺さない。弱いものもね」
「僕はどっち?」
「両方さ。ボウヤ」
彼女はベルトから弾を取り出した。1、2、3。3発が装填される。
「君、いくつ?」
僕は気になって尋ねた。
「17」
「僕は8歳」
「もっと上に見えた」
彼女は無表情に言う。
「1発3モニカで買うか?」
銃弾のことだとわかった。
「そんなお金ないよ」
「後払いで構わない」
「10年後とか?」
「そ」
「でも、なんのために?」
「逃げたくないの?」
「逃げられないよ」
彼女はふうんと頷き、僕の背後に視線を送った。髪の毛先が、水灯りを金色に照り返す。
「その水槽を壊すこともできる」
「なんで?」
「人魚の声を聞きたくないの?」
確かに、僕のジュエレッタには音声機能が存在する。
Category“Swim”
水中では意味を為さないそれを、宝石職人がなぜ搭載したのか。
「やめとくよ」
「そう」
「このジュエレッタには、歩行機能がないんだ」
「ふうん。同じだね」
「何と?」
僕と、って言いたい?
「私のモリーも歩けないんだ」
彼女のジュエレッタの愛称かな。殺し屋って、お金持ちなんだ。
「そうなんだ」
「代わりに歌う」
「へえ。聞いてみたいな」
彼女は左右非対称に口を歪めて笑った。大人っぽくてかっこいい。
僕も笑う。似てるかな?
「良い夜を」
「貴女もね」
窓から消えた。金の翼の鳥のように。
02_人魚の踵 #03
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