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7.5_泣かない女[N/J]

2251年2月6区Uエリア。
U荘1-B。


「ナオキ。あたし、2層の仕事に受かったの」
「おっ!やったなー、ジェン。どんな仕事?」
「……」
「……言えない仕事ってこと?」

「A区のお屋敷のメイドさん」
「へえ。いいんじゃねーの?」
「名前を登録してくれる」
「すげえ」
「住むところはC1」
「……そっか」

「いい条件だな。ジェン、もう決めた?」
「決めた」

「……ジェン。なんか、おれに言ってないことあんだろ?」
「……」

「宝石の女、知ってる?」
「ジュエレッタのこと?5区の店の」
「うん」
「月に住んでて知らないやついなくね?伝統工芸。他の星でも有名だろ」

「ナオキ、こないだ、壊れたやつを引き取りに行ったじゃん?」
「よく知ってんな」
「買い換えるんだって」
「……なんの話だ?」
「泣く女なのよ」
「……ジェン?」

「あたしにさ。その子のお世話して、泣かせる話をしろって言うの」

「カテゴリは?」
「Watery eyes」
「リフィルで涙は出るんだろ」
「オプションなのよ」
「オプション?」

「不幸話を聞いて、一緒に泣きたいんだって」

「それ、もう決めた?」
「……決めた」
「やめろよ」
「決めたって言ってんじゃん」
「不幸になるのを見てらんねーよ」
「あんた、あたしが不幸だって言いたいの?」
「違う、そうじゃなくて」

「娯楽のために誇りを売って生きるのは、不幸だって言ってんだ」

「あたし、幸せになりたくて生きてるんじゃない」
「おれは、ジェンに不幸になってほしくねーんだ」
「……あんたと暮らして、幸せになれる?」
「……わかんねー」
「あんたの重荷になりたくないし」
「なんのこと?」
「……怪我とかやだし」
「減ったろ」
「今、算数してない」
「ごめん」

「……それに」

「……それに?」
「あんたと、……結婚してもさ」
「……」

「6区に住んでちゃ、子どもだって産めないじゃん」

「……そうだよな」

「この家出てく。荷物は夜に取りにくる」
「……」
「……」
「……ナオキ」
「おれがいなくても飯食えよ」

バタン。

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