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7.5_採用面接#01

2251年1月。

えーっと。……こんな服でいいのかしら。

2層A-1-1ホワイト宅の前で、ジェニファーは自分のつま先からボディにかけてを確認した。
一番地味で踵が低い、ネイビーのパンプスとジーパン、半袖のサマーセーターは黄色。髪は事務的なアップにセット。ピアスもネックレスも腕輪もつけていない。
ゴールドのネイルはちょっと派手かも。でも、今日の夜も仕事だし。

ガチャ。音を立てて扉が開く。お金持ちなのに、どうして自動じゃないのかな?

「ジェニファーさんですか?」
「あ、はい」
執事の人が現れた。何歳くらいかな?背が高いお爺さん。見下ろされるのは新鮮。チャイニーズの老師って感じ。
老執事がとてもう優雅な一礼をした。ジェンはモードを切り替え、自分にできる最上級のお辞儀を返す。
白手袋がスッと扉の奥を示す。長い腕。若い頃は、このお爺さんどんな仕事をしていたのかな、とジェンは思った。
「お待ちしていました。奥様のところへご案内します」
「はい。……あの、こんな服で良かったですか?メールに、普段着ってありましたけど……」
「はい。きちんとされていますよ」
「そうですか。ちょっと安心」
老執事に続き、エントランスを進む。歩く毎に、ヒールがカツンカツンと甲高い音を立てる。音が下品じゃないかしら、とジェンはとても気になった。
「おそらく、貴女で即決です。次以降の応募者はキャンセルになるでしょうな」
「え。わかるんですか?」
「はい」
カツン、カツン。カツン。
「えーと。理由を聞いてもいいですか?」
「変な意味ではなく、容姿が奥様の好みです」
「あ。もしかして、背が高いから?」
老執事の横顔がジェンを見た。
「左様で。なぜわかりました?」
「貴方もとても背が高いもの」
「ほっほっほ。私も、奥様にスカウトされたクチでしてな」
「あ、そーなんですね」
お髭で顎が隠れてるけど、横顔の線がナイフみたいにシャープ。身長は190以上ある。若い頃は、ものすごい美男子だったのかもしれない。
「ジャン・レイと申します」
「ジャン様。よろしくお願いします」
カツン、カツン。このヒール、こんなにうるさかったかしら。靴底のゴムが減ってるのかも。
「ジェニファー。奥様は、人の話を聞きません」
てことは、面接官は女主人の方。ご当主が37歳で、そのお母様だよね。60歳くらいかな?
「そうなんですか」
うーん、緊張。年上の女の人って、相性が良くないことが多いんだよなあ。
ジャン様はほっほっほ、と笑った。
「色々言われて頭に来るかもしれませんが、そういう方だと割り切って、待遇面を検討することですな」
「わかりました」
カツン。カツン。……この廊下、長くない?
「ジェニファーは、好きな人はいますか?」
何系の質問だろう。正直に答えたほうがいいよね。
「はい。私、3年同棲している彼氏がいるの」
「奥様はその話を聞きたがるでしょうが、そのまま答えて、嫌なものは嫌と言うんですよ」
「?わかりました」
「人の話を聞かない方です。嘘やごまかしは必要ありません」
カツン。カツン。
「わかりました。……ジャン様、メイドの募集ですよね?」
「はい」
カツン。
「どうして、彼氏が関係あるの?」
「少し特殊な業務だからです」
カツン。カツン。
「ご子息のお妾さん?」
「違います」
カツン。
「ほっとしました」
「先に言いましょう。オプションになるのです」
……カツン、カツン。カツン。
「オプション?何の?」
「新しいジュエレッタのオプションとして、釣り合いの取れた、6区の美しい女を雇うのです」
ジャン様が、前を見たままそう言った。
ジュエレッタって、AI搭載の宝石女のことだよね。お金持ちの家にある、動くお人形。
ジュエレッタのオプションになる?
あたし、お人形のオプションってこと?
「……なに?それ」
「辞退しますか?」
カツン。カツン。……あ。扉の前。
こんないいお家のメイドさんだもん。6区の女に給仕は無理でも、洗濯女かお針子くらいはさせてもらえる者だと思った。
お人形のお人形をするって……。えーと。これ、まじのやつ?
「うーん……。ま、いいや。一回、奥様とお話します」
ここまで来たし。たとえ断るにしても、話くらいは聞いとこう。こんな大きなお屋敷の、奥様の顔も見てみたい。
「賢明ですな」
「奥様って、悪い人ですか?」
「悪い人ではないのです。かなり嫌な人ですが」
苦虫を噛み潰したような顔。ジェンは、ふふっと吹き出した。
「ジャン様も、色々と大変なんですね」
「はい。……ここです。私も同席しますので、ご安心くだされ」
「助かります」

ーーギイ。

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