20_夏への扉#04
「つーかまえた!」
公園の噴水から引っ張り出したのはシロ。3匹の中でも大人しくて、あまり迷子にならない電気猫だ。
「レニー!」
「オーケー」
レニが駆け寄り、シロの首輪にペンを当てた。シロの瞳がブルーから透明になり、またブルーに戻る。
シロはブルブル身体を揺らし、何事も無かったようにニャーンと鳴いた。
「よし。帰ろう」
「うん」
お屋敷から歩いて5分の公園。僕はレニと歩き出す。今日はサマー・ウェザーで、汗で服が肌に張り付く。レニは半袖だった。
「昨日、レイチェルの所に行ったよ」
「あら、そうなの?どうだった?」
「楽しかったよ」
「トピーもいた?」
「うん。姉妹みたい」
「そうね」
正門が見えてきた。細い金属を複雑に編み上げた、すごく大きな白い門。今はどうってことないけれど、初めて見た時は、天国の入り口みたいな感じがした。
「レニは、なりたいものってある?」
「ないよ」
「子どもの頃は、あった?」
「ないね」
「ふーん」
門は自動的に開く。白い石を敷き詰めた道を歩きながら、僕は聞く。
「レニの仕事って何?」
「色々よ」
「1番好きなのはどれ?」
「好き嫌いで仕事はしないわ」
「へー」
「でも今やってる仕事は、全部それなりに気に入ってる」
「アイキドウも?」
「ええ」
「猫探しも?」
「イエス」
「配達も?」
「場所によるけど、まあまあよ」
「ラジィは、なりたいものがあるの?」
「僕、早く大人になりたい」
「ああ。それなら私も同じだ」
「私も、早く大人になりたかった」
「今は?」
「大人なのかな?子どもではないね」
「大人になっても、強くなっても、仕事があっても、思い通りに生きられるわけじゃない」
「レニもそうなの?」
「そうよ」
「いろんなお仕事してるのに?」
レニは笑った。
「なんでもできるわけじゃない。他の人もできることをなんとかやって、暮らしているの」
「そうなんだ」
「でも、立てる場所が少し変わる」
「ビルの屋上とか。スペースシャトルの車窓とか。地球の山道とかね」
「それだけのことよ。大人になるってのはさ」


