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33_トリプル・トポロジーズ#03

水曜日午後。
2層4区Aエリアホワイト家内庭。

「あーっ!!リックお兄ちゃんだ!!」
「やあ、ラジィ。ミケを連れてきたよ」
リックはサーチャーのバイトを、講義が午前だけの火曜と水曜の午後に登録している。
ここ1ヶ月。ホワイト家の発注が続いている。ラジィと執事の人としかやり取りはない。どういう意図があるのかな、と前回から数通りのケースを想定している。
リックはラジィにミケを手渡す。ニャーンと鳴いた。近くを電気蝶が1羽通った。
「ミケ、どこにいたの?」
「だいぶあっち。プラント近くまで探した」
リックは腕で東の方角を示した。ラジィの目がリックの腕の先を追いかけた。
「へー。プラントって、野菜や果物を育ててるんだよね?」
「ラジィ、よく知ってるね」
「うん。うちのご飯、毎日野菜と果物があるんだ。リッチだなあって、僕いっつもカンシンしてる」
「あははっ。確かに、加工前のものはあまり流通していないね」
学食でも、生の野菜と果物は割高。カットフルーツやフルーツサイダーもあるが、リックは一番安いバナナしか買わない。
ラジィはうんうん頷いた。
「だよねえ。半年以上になるけど、僕、まだ慣れない」
「半年以上?」
どういうことだろう。半年前は、違う暮らしをしてたってことか?

「ラジエル様」
「あ!ジャン!」

いつもの執事の人。リックよりも頭一つ分高い。自分の身長が177センチメートルだから、190を越えているだろう。
「執事長のジャン・レイです」
キレのいい一礼。武道家っぽい。リックもきちんと礼をする。
「猫をお届けに来ました。ラジエル君と話し込んじゃって……。ごめんなさい。まずかったですか?」
Aエリアのご子息に、あまりに馴れ馴れしかったろうか、と心配になってリックは聞く。ジャンの目元がほっこり笑った。
「ほっほっほ。大歓迎ですじゃ」
「あ、良かった」
ラジィが、んー?とジャンの周囲をぐるっと回った。重心が傾いても、脚の動作は安定している。
「ジャン。なにか、たくらんでる顔?」
「ラジエル様は聡明でございます」
ジャンが右腕を玄関扉に向かって伸ばした。あの先には、入ったことは一度もない。
レニのことを思い出した。猫探しで、腕を見込まれ武道の教師に雇われたって。
「キンドレッド殿。坊っちゃまが、お話したいとのことです。中で少しよろしいですかな?」
え?とリックはラジィを見る。グリーンの大きな双眸が、リックを真っ直ぐ見返した。
「坊っちゃまって、ラジィじゃなくて?」
「うん。僕は、このうちの子じゃないもん」
ラジィがいつもの調子で言うものだから、リックはなんだか切なくなった。
「……そうなんだ」
ジャンの両目が三日月みたいに細くなる。
「ラファエル様。ホワイト家の当主でございます」
ラファエル・ホワイト。
4区A1-1ホワイト家の当主。
さっきの話からすると、孤児のラジィの後見人。どんな人だろうか。
「僕に、何の話ですか?」
「スカウトです」

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