31_エリジウム・リバー#01
イーストSエリア7丁目。
21世紀月面開拓時代からの由緒正しいゴミ捨て場。もといガラクタ置き場、兼ジャンク屋。
上層の人は知る人ぞ知る、6区民は誰もが知ってるセカンド・ハンド・ショップ”誰かの店”
”誰かの店”はあくまでも観光ガイドブックの掲載名であり、現在は”ナオキの店”として地域住民に呼称されている。
「ナオキ、友達のピッポ」
「どうも、ピッポです」
「よっ、ピッポ。僕ナオキ。よろしくな」
組み立て損ねたプラモデルの山が折り重なったような街並みの中、近代的に手入れされた一画。リニアバイクやミニマムカー、浮遊台車が陳列された店先。ベージュの作業着姿でリックとピッポを出迎えたのは、現在の店主を務めるナオキ。
二人はレニ、ジェンとアイスクリームを食べた後、駅構内のカフェでサンドイッチを食べてからの移動。時刻は14時過ぎである。
「ほえーかっこいい……。純度100%の和製イケメンだー」
「あははっ、サンキュー。これ、僕の名刺」
「名刺!?えーと!?ア、アリガタキシアワセ……」
「そんなにありがたがらなくてもいいって。フリー素材でちゃちゃっと作ったやつだし」
「いやー。俺、名刺をもらうの、初めてで」
「あっはっは!この先いっぱいもらうだろ。なんかあったらそれ使え」
「なんか?あ、そこはかとなく理解」
「そういうこと。いろんな奴がいるからさ」
「ナオキ、ピッポは光が専門なんだ」
リックの言葉に、ナオキがまじで?と声を上げた。
「ピッポ、PPUわかるか?」
「ア・ギブン」
「おいおいなんだよピッポ最高かよー!」
がしっ!固い握手とハグ。こういう男子ノリは久しぶりで、リックはなんだかほっこりした。
ナオキが駆け出しながら振り向いた。
「倉庫からあれ出してくるから、店ん中で待っててくれ!えーと、その辺のもん食ってていい!コーラも!」
「サンキュー、ナオキ」
ウィン。自動ドアの反応速度は非常に滑らか。センサーの性能がいいのだ。
ピッポが息を呑むのが分かった。リックは何度も訪れている店内を改めて見回す。
アイボリーの3面の壁。右手にシェルフ、左手にコンテナ。正面にはカウンター。カウンターは、驚くべきことに本物の木。しかも一枚板である。カウンターの奥には、レトロなレジ、スタッキングの椅子4つ、ヒーター、簡単な調理台、冷蔵庫などがある。リックはカウンターの内側に入り、冷蔵庫からコーラを2本取り出す。蓋を開けてカウンターの外に出る。
カウンターに向かって右手は、アンティークな小物ーー紙の本や文房具、音が鳴る小物入れ、本物の鏡などがカテゴリ別に並んでいる。観光客向けのコーナーで、値札もそれぞれについている。
左手のコンテナは、もっとマニア向けだ。浮遊コンテナが天井まで積み上がっており、それぞれにジャンル別のタイトルが表示されている。ピッポの両目はそれに釘付けになっていた。リックは彼にコーラを一本差し出す。ピッポはコンテナを見上げたままに受け取った。
「……この店すげーな、リック」
「だろ?初めて来た時感動した」
カウンターに置いてあったリモコンをピッポに渡す。すぐに用途を理解して、ピッポはコンテナを一つ降下させた。
「リック。これ、レコード盤だぞ」
「うん。前にこれ見せてもらった。これやって、ここ押して。な、ちゃんと動く」
「すげー……。音がする」
「うん。すごい」
「これはCD」
「うん」
「これはMD」
「これ、ほんとにすごい」
「カセットテープもあるぞ。テープは……うーん、修復しないと崩れるか?音出るかな?」
「タイトルがある……。歌かな?聞いてみたい」
「だな」
「……あ、ナオキだ」
ウィン。
「なあピッポ!ちょっとこれ見てくれ!」
「おお……、おおおおお!!ナオキさん、これはガチのホリダシモノ!!なんでこんなん持ってんすか!!??」
「かーっ!そうそうそうこなくっちゃ!!この価値、わかってくれるかー!?」
「これは20世紀のテーブル筐体!!まじでなんで持ってんすか!!??」
「潜って拾った!な!すげーだろ!?」
「すごすぎぃ……!!」
「これ直してーんだ。ピッポ、力貸してくれるか?」
「もちろんです!ナオキ氏、感謝に絶えませんぞ」
「やりい!なあリック、ピッポいいやつだなー!」
「でしょ?はい、コーラ」
「お、サンキュー」


