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32.5_The time has come.#01

「誰に用?それとも迷子?」
「ほえっ?」

6区イーストS-3駅の改札を抜け、駅構内から3歩進んだところで、ライカは声を掛けられた。
右。違う。左。下。
見ると、ヤンチャそうな10歳くらいの男の子。気怠い感じの立ち姿は、戦闘モードへの移行が滑らかそうである。
「えーと、ワタシですか??」
「そ。カンコーキャク?ここは6区。5区の飯屋は3駅前」
腕でバッ、と方角を示す。親切心で声を掛けてくれたようだ。ライカはぺこんとお辞儀する。
「ご親切にどうも。ワタシはこの街に用があります。"ナオキの店"に行くのです」
「えっ?ナオ兄の……?」
少年はぽっかーんと大きく口と目を開けて、ライカの頭の先からつま先まで視線を3往復させた。
「……はっ!赤毛でちっちゃい……!あーーーーっ!!!!オヤジが言ってたパフェの女!!」
ビッグ・ボイス。ワタシといい勝負です、とライカは内心でプライズする。
「よろしくな!オレはソル、ナオ兄の弟子!あんた名前は?」
少年はにかっと笑い、ライカに右手を差し出した。瞳の色はネーブル・オレンジ。柔らかそうなザンバラ髪はベージュがかった灰色。
口の左端を上げた笑い方が、あの人に似ている。
「ワタシ、ライカと申します」
その手を握る。身長はライカの方が10センチ以上高いけれど、手は同じくらいのサイズだった。
ソルは、両手を腰に当てて仁王立ちした。そして右腕を持ち上げ、親指をくいっと背後のストリートに向ける。
「ライカ、オレがボディガードしてやんよ!一緒にナオ兄んとこ行こう」
「アリガトウゴザイマス」
ぺこん。ぺこ。
ザッザッザッ。
少し歩いて、隣のソルが顔を向けた。
「あれ?でもさ、なんで連絡しねーの?ナオ兄、駅まで迎えにくるだろ?」
「わくわくしていて失念しました」
「うわー!ラッブラブー!!」
「ハイ。ネツレツです」
「へーっ、なんかお似合いな気がしてきた!ライカ、上の人だろ?いつも何してんの?」
「大学へ行っています」
「あったまいいんだなー!!わっかるー!!」
「はて?」
「しかもバリかわいい!へー、そっかー!うんうん、言うことないじゃん!お似合いお似合い!ナオ兄やっるー!あ、ここ右な!」
ソルがライカの手首を握り、右の道へと進んだ。
「ふむ。デジャヴを感じます」
「なにそれ?美味い?」
「食べ物ではアリマセン」
「なーんだ」
のれんの掛かった食事処。
ブルーシートの露天。
座席として配置された、逆さを向いたプラスチックのボトルグレート。
人力自転車が少し先をチリンチリンと通り過ぎた。
イーストの街並みは、宝石箱のようにきらきらしている。
「やはり聖地。美しい」
「それ、食いモン?」
「ソルくん。お腹が空いていますね?」
「おう!あ、ここ左!」

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