「やっほー、モリー!」
レニのアパートに着き、部屋に入ったキャシーはモリーに駆け寄った。レニは彼女のスーツケースを運び入れ、ドアを閉める。
「あれ?笑い方少し変わった?」
「そう?私は毎日見てるから」
「あ、わかった。似てるんだ」
キャシーは窓際のパイプ椅子をひょい、と持ち上げ、モリーの左側に設置。レニの手を引き座らせる。
「ハイ、チーズ!」
パシャ、とキャシーが擬音を発生。
「ほら見て、レニ」
キャシーのウォッチ上。平面ホログラムで現像されたフォト。
モリーと並んだ自分を初めて見る。へえ。こんな感じなんだ。
「モリーがレニに似てきたんだよ」
「へー」
似ているかどうかはわからないが、仲良さそうな感じはした。
レニは椅子から立ち上がり、冷蔵庫に向かう。
「キャシー、ドリンクは?それともアイス?」
「アイス!」
「イチゴとチョコと、クッキーアンドクリーム」
「チョコがいいな」
「キャシー、何が好きだっけ?」
「チョコミント」
「夜はどこか食べに行こ。旅行者向けのレストラン、日替わりメニューがビーフだ」
「それ、本物?」
チョコアイスを3口で食べ切ったキャシーは、窓辺でミント・ウォーターを飲みつつ聞いた。レニはクッキーアンドクリーム片手に、ウォッチの原材料表示をスクロール。
「2層のプラント産だけど」
「合成肉じゃなくて、歩いてたやつ?」
「そうだよ」
「すっごい!」
キャシーがぴょんと飛び跳ねた。火星生まれだからか、惚れ惚れするような身体コントロール。軽く速く、重心に粘りがある。
「月のごはんはいいなー。火星の食べ物、全部硬いかパサパサだもん」
「地球はもっと美味しかったよ」
無意識にぽろっと出た。キャシーがくるんと半回転してレニに向く。
「え!レニ、地球に行ったの?」
自慢話にならないかな、とほんの少し逡巡したが、キャシーの瞳はらららん、と星をきらめかせている。
「仕事でね。ジュエレッタの配送。生の野菜や、生のサカナや凝った料理を食べさせてもらったの」
「えーっ!サカナを生で食べるの?目は?」
「うすーく切ってあるのよ。サシミって言うの」
「あたしは焼いたお肉がいいかな」
「それには同意。ほとんどはすごく美味しかったけど、一つだけ苦手なものが見つかった」
「それ、何?」
「貝」
「カイって何?」
「ちょっと待って。フォトがある。……はい、これ」
「うおー、ブヨブヨ。グネグネ。大昔のアース映画の、火星人の破片みたい」
「なんかわかる」


