Pipi.
“Hi.”
“Leni. I request you a job.”
“Okey. What’s kind of work?”
“It’s a hitman.”
—I’ll let you know the details later.
Pi.
「ヒットマンは7ヶ月ぶり」
レニはウォッチを操作し、カーから届いたメールを表示する。ターゲットは1人。
名前 デイジー・ベル
年齢 34歳
誕生日 4月11日
身長 175cm
体重 52kg
足のサイズ 25cm
髪色 ブルー
瞳 ピンクパープル
好物 スパークリング・ワイン
苦手 水
支給武器はガラスを通過する光線銃。ケーブルブリッジのタワーから、移動中のエアカーを狙う遠距離狙撃。報酬は80モニカ。
『ヤバイ仕事だよねー』
キャシーの言葉がふと浮かぶ。あの時キャシーが引き受けていた180モニカの仕事に比べれば、なんてことはない。作戦内容をイメージ。……うん、しくじらなければ、100パーセント無傷で帰って来られる仕事。しかし。
「面倒くさい」
割のいい仕事だが、気が滅入る。理由はなんとなくわかる。
「私も、アイスクリーム屋始めようかな」
ジェンとラピスラズリの笑顔が浮かぶ。姉妹のように、母娘のように、または親友のように見えたツーショット。真冬の空に、マフラーを巻く常連客が訪れる。
ジェンはしなやかに逞しい。いつも真夏のような笑顔だが、2層の暮らしはこことは別の苦労があるだろう。
別に、3層の埃っぽくて雑然とした暮らしに不満があるわけではない。仕事があり、報酬があり、冷蔵庫があり、帰ったら冷えたウォーターがある。今ではモリーがいて、頼めば歌を歌ってくれる。地球にも行けた。
お腹を空かせることも、喉が渇くこともない。足りないものは何もない。それでも眩しい。いや、だからこそ、ジェンの笑顔が、目を細めるほどに眩しい。
この仕事で、笑える?
窓の外を眺めると、黒い煤が散っていた。どこかのダクトが外れたのか。
2層の雪は白かったな。
そこまで考え、首を振る。モリーを見ると、微笑んだままに首を揺らしてレニを見た。
「暮らしていくにはお金が必要」
レニは反重力ブーツに履き替え、防弾ジャケットに袖を通す。
「そういうわけよ。悪いわね、デイジー」
モリーに手を振り、扉を出る。古いドアの感触は重い。


