「長旅お疲れさま。ようこそ地球へ」
ビゼンの自宅、庭の見えるゲストルームで、レニはセイザし会釈する。テーブルを挟んだ対面には、ビゼン、”オパール・ガール”ウパラ、さらに隣に10歳くらいの少女が1人。
タタミ。
カケジク。
シシオドシ。
キモノ姿のボス。
フィクション・ムービーの世界みたいな世界観である。ニホントウも家のどこかにあるかもしれない。
吸う空気はタタミの匂い。これ、ウォーター・フレーバー化しないかしら。清涼感があっていい。
「ビゼン、こちらがアンバー・ガール」
レニは右隣に座るジュエレッタを示す。
クロード・ロックのお仕着せであるキモノを纏った”アンバー・ガール”
琥珀色の髪と瞳は、キモノとの相乗効果で美しい調度品としてよく馴染む。
「ありがとう、月からここまで連れてくるのは大変だったでしょう?」
「1番大変だったのは渡航前の手続きです。空港からはナビゲートがあったし、アンはちゃんとついて来た」
ビゼンはにかっと笑った。彼の隣のウパラも笑みを深くする。
「そうかい。一泊だけでは気も休まらんが、ゆっくりくつろいでおくれ」
「もてなしを感謝します。ビゼン」
ビゼンが身体を傾け、ウパラの向こうの少女に視線を合わせた。
「ワカバ。レニさんと一緒に温泉へ行って差し上げなさい」
ワカバと呼ばれた少女はこく、と大きく頷く。肩のあたりで切り揃えた髪も、大きな瞳も澄んだ黒色。レニはモリーの瞳と髪の色を思い出す。
「はい。ねえ、わたしも温泉入っていいの?」
「もちろんだよ。お土産も買っておいで」
「やったー!」
ビゼンがくしゃっと笑った。少女は弾むように立ち上がり、机を回ってレニの前でぴょこんとお辞儀。レニもつられて頭を下げる。
「わたし、ワカバ。よろしくおねがいします」
「レニです。よろしくね」
「帰ってきたら夕餉にしよう。食べられないものはありますか?」
ビゼンはアン、レニ、ワカバをにこにこ微笑み眺めて言った。ユウゲ……文脈からするとディナーのことだろう、とレニは予想。
地球のディナー。ニホン。料理が思い浮かばない。
「多分、食べたことのない物が多いかと」
「それもそうだ。では、好みの味は?」
「フレッシュな味が好きです」
「魚は?」
「好きです」
「肉は?」
「大好き」
「わかりました。では、ごゆっくり。水が好きなお嬢さん」


