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26_ハロー、ワールド#04

「レニ!僕、脚を代えるんだ」
月曜日午前10:00のホワイト家中庭。
ハーフパンツの運動着姿のラジィは、出勤してきたレニに駆け寄り、開口一番そう言った。
レニはいつものTシャツジーパン。黒キャップを外し、一度瞬き。
「そうなの?いつ?」
「半年くらい先」
「知らなかったわ」
「昨日決めたんだ」
「そう。大きな決断だわ」
ラジィはハーフパンツをぐい、と捲る。肌との継ぎ目が露出する。
レニは片膝をつき、部位を見る。ラジィはレニに初めて見せる。というか、ジャンとハカセと看護師さん以外に見せたことがない。
「今、ここからカーボン」
「うん」
「残ってるとこ、全部取る」
レニの息が1秒止まった。ラジィはレニの瞳を見て、ホッとした。
可哀想、って感じじゃない。困っているのとも違う。
どうして?が一番近い。そんなスミレの瞳だった。
「ラジィ。自分の身体がなくなるの、怖くはない?」
ラジィは頷く。
「うん。初めの時も怖くなかった」
この家に貰われてくる時、脚を切った。それが条件の一つだった。色んな人に会いに行くのに、歩けないと困るから。
あの時は、歩けるんなら、それでいいって思ってた。
「私は、身体が自分のものじゃなくなるのが怖いわ」
レニの眉毛がハの字になった。初めて見る表情。レニはいつも凛々しくてカッコよくて、ラジィのヒーローなのだけれど、今日はなんだか少し違う。
レニって、レニなんだ!と思った。
それって、すごい大発見。大人の強い女の人にも、怖いものがちゃんとあるんだ。
「レニにも怖いものがあるの?」
「あるよ」
「たとえば他には?」
「オバケとか」
オバケかあ。僕は好き。本当にいたら、友だちになりたい。夜寝る時、話し相手がいないんだもん。
「カイダンは?」
「耳塞いじゃう。夜、眠れなくなるもの」
「ジェニーはカイダン大好きなんだよ」
「知ってるわ。臨場感たっぷりに話すんだもの。だから私、オバケが怖いのよ」
ラジィは準備体操を自主的に始める。レニの勤務時間は夜7時まで。午後はおばあさまのところに行かなくちゃで、レニは護衛で来てくれるけど、そこでは稽古も話もできないし。朝の2時間、きちんと使いたい。
「ハカセが、手術したら、ゼンシンウンドウができなくなるから今のうちに鍛えておくように、って」
「了解」
「ねえ、レニ」
「何?」
レニは膝伸ばしのストレッチしながら僕を見た。僕も、レニの真似をする。
「僕、レイチェルが会いたい時に、ちゃんと会えるようになりたい」
「そうね。レイチェルの面会はタイミングがあるから」
「うん」
脚は機械だけど、バランスを取るのは全身なんだ。脚だけが僕の身体じゃない。
「走って会いに行きたいくらい大好き、ってリックお兄ちゃんが言ってたの、ちょっとわかる」
まず僕がいて、脚は僕の身体になるんだ。
「鍛えることよ。ラジィ」
「うん」

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