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26_ハロー、ワールド#03

「レイチェルはね。僕にお姫様抱っこして欲しいんだって」
「オヒメサマダッコ、とはサイド・ハギングのことか?」
「うん」
レイチェルに会った日の午後。
ラジエルは自室でアメとおしゃべりしていた。ジャンが淹れてくれた紅茶をぐるぐるかき混ぜる。お砂糖はどのくらいがいいんだろう?多い方がいい気がして、とりあえず8個入れてみた。
アメはソファの斜め向かいで、ラジィに顔を向けている。こくん、と小さく頷いた。
「ラジィが嬉しそうに見える」
「うん!嬉しい」
「理由を聞いてもいいだろうか?」
「うん。レイチェルはね。僕をカワイソウな子にしないんだ」
「カワイソウな子?」
紅茶のカップを持ち上げ啜る。
……。
…………。
…………甘いなあ。
ジャリジャリしてる。シュガー、入れすぎちゃった。
「大人はみんな、カワイソウな僕に優しい」
「ふむ」
今日のおやつはクッキー。あんまり甘くないやつがいいな。この黒いやつにしよう。
「クララさまは、少し違うけど。でも、僕が子どもで未熟だから優しい」
「クララは、他の大人となぜ違う?」
「クララさまは、僕を甘やかしたりしないから」
少し苦い。紅茶を飲む。うーん、微妙。お砂糖、もしかして全然入れなくて良かった?
「ジャンもレニも、ジェニーも大好き。だけど、やっぱり僕はカワイソウな子なのかな、って思う時があるよ」
「たとえば?」
「僕を甘やかさないのはクララさまと同じだけど、身体に無理のかかることは絶対にしないんだ」
次はナッツが乗ってるやつ。
「僕ができることしかさせてくれない」
あ、これ合うかも。うん。紅茶が美味しい。
赤いジャムクッキーを取る。食べるのがなんかもったいなくて、指でつまんで表と裏と、表を見る。
ちら、とテーブルセットを見る。クッキーのお皿。シュガーポット。ミルクピッチャー。ティーポット。
高そうなティーセットは2揃い。僕の分と、アメの分。アメは食事しないけど、ジャンはいつも用意してくれる。
同じものが食べられなくても、同じものが飲めなくても、アメがニンゲンじゃなくっても、僕、こんなに楽しいんだ。
「でも、レイチェルは違う。脚がなくて歳下でも、僕に抱っこをお願いするんだ。抱っこはまだできないけど、僕、嬉しい」
「なるほど」
レイチェルとも、こんな風にお茶できたらいいのにな。
アメがふむ、と頷いた。顎に曲げた指をあてる。瞳がキラッと虹色になる。指が離れる。僕を見る。
あ。アメ、なんか言う!

「レイチェルは、ラジィをカワイソウな子ではなく、オウジサマにしている」
「王子様かあ!」
僕は叫んで、ぴょん!と立ち上がった。身体が勝手に動いちゃった。
「レイチェルは、ラジィのオヒメサマだね」
僕は嬉しくなって、クッキーを持ったまま机を回り、アメの隣に移動した。
「うん!僕、お姫様を抱っこできる男になるんだ」
アメの口の端っこが、ほんの少しだけ上がったみたい。
僕はジャムのクッキーを頬張った。イチゴの味と匂いがする。

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