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19_ あるいは水でいっぱいの海#04

「家庭教師の先生が来るんだって」
『ラジィは何を習う?』
「武術。カンフーではないみたい」
『ラジィは家庭教師が嫌なのか?』
アメが首を傾げる。
ジェニーの所から帰り、ジャンとご飯食べて、スクリーンムービーでベンキョーして、ラファエルとご飯食べて、お風呂が終わって、後は寝るだけ。僕は部屋のソファーに寝そべって、アメとだらだら話してた。
「わかんない。ジャンはカッコいいし面白い。僕のこと大事にしてくれる」
お風呂の後で、ジャンが「武術の先生を雇いました」って言った。僕はポカーンと口を開けて、「ジャンじゃないの?」って聞いた。そうしたらジャンは、
「もちろんじいやもいたしますが……」
だって。「……」って何だよー、って話。
「ジャンに習いたかった」
『ジャンだから習いたかったということ?』
「そう」
『ジャンはなぜ新しい家庭教師を雇う?』
「ジャンは忙しいんだ。前のショーが評判で」
クララが主演の「トゥーランドット」
前座を務めたジャンに、カンフーショーやカンフー講座のオファーがいっぱい来ているらしい。
「ほとんど毎日会っていたけど、週4回になるんだって」
マリアンヌおばあさまは、チャリティーが大好き。ジャンに、そういうの行けってさ。
『ラジィは、ジャンに会えなくなるのがサミシイのでは?』
「そうかも」
そう。僕、ジャンがいないとどこにも行けない。いられない。このお屋敷だって、ジャンがいないと広すぎるんだ。
アメはゆっくり瞬きをした。ペリドットの虹の雨が、降ってるみたいに揺らいでる。きれい。
『ジャンのことと、新しい家庭教師のことは、別のことだ』
確かに。僕はまだ、その人に会ったこともないんだった。武術の種類だって聞いてない。
「そうだね」
『家庭教師について何か教えてもらったか?』
「猫探しに来てくれてたハケンサンだって。今日、ジャンがスカウトしたんだって」
『名前は?』
「忘れちゃった。なんだっけ……」

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