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19_ あるいは水でいっぱいの海#01

朝食はフル・イングリッシュ・ブレックファスト。目玉焼き、ソーセージ、ベークドビーンズに焼きトマト。パンは3種類。

毎朝これだけど、まだ慣れない。ちょっと多すぎ。僕はミルクを飲みつつ、ベイクド・ビーンズの端っこをフォークでつんつんとつついた。

「ラジエル、知っているかな?歌姫ベルが奇跡の復活を遂げたそうだ」
ラファエルが、ウォッチのデジタルニュースをアップにして言った。少し前に、お皿は全部空になってる。僕が食べ終わるのを待っているのかもしれない。
ちらっとジャンの方を見ると、渋い顔をしていた。うん、お行儀悪いよね。
「歌姫ベルって誰ですか?」
でも、会話に付き合うことにする。とりあえず、目の前のインゲンマメから逃れたい。
ラファエルはコーヒーカップをゆっくりと口に運び、手に持ったまま語り出す。
「デイジー・ベルは女神のように美しい。精霊のような歌声。6区の希望の象徴なんだよ」
6区って?と気になったけど、僕は神妙に頷く。なんとなく、食卓でおじさまに聞くことではない気がした。
「奇跡の復活って?」
ラファエルは、口と右目を歪めて苦そうな顔をした。
「数日前のことだがね。凶弾が彼女を襲った。しかし、彼女は蘇った」
この話を始めたことを、後悔してるっぽい顔だ。キョウダンってどっちだろう。
「人々の願いが奇跡を起こしたのだね」
ラファエルはそう言って立ち上がり、僕に微笑み部屋を出た。

要するに、ラファエルの話はこういうこと。
歌姫ベルが、撃たれたけれど復活した。6区の人たちの願いが奇跡を起こしたからだ、って。

大人って単純だな、と思いつつ、ラジエルはロールパンを指でちぎった。

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