top of page

16_誰も寝てはならぬ#04

実際に会うと、小さくてびっくりした。
「ラジエル様。今宵のトゥーランドット、お楽しみいただけましたか?」
舞台衣装からドレスに着替えたクララは、なんていうか、大人の女の人って感じがしなかった。小さくて細くて、羽根があるみたいに軽やかなんだ。
「感動しました。クララさまは、えーと、ステージでとても大きく見えました」
「まあ。素直な男の子」
「ラジエル。失礼ですよ」
「あっ!ごめんなさい。えーっと……スターだなって」
「エトワール?光栄ですわ」
クララはピンクのドレスの裾をつまみ、妖精みたいにレヴァランスした。

ムーンタワー最上階フロアは丸ごと、ムーンライト家の住まいの一つ。僕とおばあさまは、公演後のクララ、彼女の夫イワンとの会食。
「ラジエル君。脚はプロステティックと聞いたよ。大変だったね」
「そんなに、です。僕は歩ければそれでいいですから」
「まあ。クール・ボーイね」
「さっきから、クララはラジエル君がお気に入りだね」
「話すことが楽しいんだもの」
「参ったな、僕はジョークは苦手なんだ」
「貴方はそこがいいんですよ」
「ははっ、クララはいい妻だなあ」
僕はおばあさまの隣で、エビギョーザをもぐもぐした。今夜のコースはチャイニーズ。回る机がアトラクションみたいで楽しい。

ジャンもいたらいいのに、と思うけど、大人の世界は色々あるのも知っている。明日は会えるはずだから、ショーの話ができるかな。ジャン、すごくカッコよかった。カンフーを教えて、って頼んでみよう。

「クララさま、一つ聞いてもいいですか?」
食べるものが無くなったので、僕は気になっていたことを聞くことにした。
「なんでしょう?」
「クララ様にとって、愛って何ですか?」
「あら」
「ラジエル。何を聞くの」
「僕も聞いてみたいな、クララ」
「まあ、貴方まで?うーん、そうね……」
おばあさまが小言を言いかけたけど、イワンのおかげで聞けそうだ。
クララは薄紫の大きな瞳を窓の方に向けて、しばらく動かなかった。その横顔は、サロンのジュエレッタに似てる。
クララはやがて大きく瞬き、僕の顔を見て言った。

「トゥ・シューズみたいなものね」

マンゴーとパイナップル、花の香りのお茶が赤い机の真ん中に置かれた。

白(透過背景) .png

Privacy Policy

Cookies Policy

© 2025 μ Created with Wix.com

bottom of page