top of page

日曜朝8時半「プリュム・アン・ヴェール」[note応募作品]

  • 執筆者の写真: μ
    μ
  • 2025年12月31日
  • 読了時間: 2分

『ーー青いインクは海の色?空の色?それとも誰かの涙の色?』



 かち、きらっ、しゃきーん!



『白い世界にブルーの祝福をーープリュムアンヴェール・シエル!』



 ちゃっちゃら、ちゃーん!ちゃちゃっ!



「うわすご!!ぬるぬる動く〜!!」


 40インチテレビ画面の両サイドを鷲掴みにし、食い入るように画面を見る。色がついてる!動いてる!喋ってる!!


『世界から色を奪うなんて許せない!』


 戦闘シーンは空中戦。プリュシエル初登場回だけあって、空は圧巻の作画。流れる雲の影のグラデーション!


「色指定細かぁ!わー、腰のアクセの書き込みやば!!」


 鉛筆、筆、絵の具の3つのアクセサリーが、動くたびに重力を伴い揺れる。


『青空を取り戻すの、このガラスペンで!』


「いいじゃんいいじゃん!声も可愛い〜!」


 🎶♫『次回もお楽しみに!』


「はー、もー泣いちゃいますよ。ティッシュティッシュ」


 畳を這ってティッシュの箱に手を伸ばす。4つ折りにして目元に当てると、しゅわ、とティッシュが小さくなった。


 数年ぶりの実家の居間。近所の犬が吠えていて、世間話が塀の向こうから聞こえる。


 テレビの画面は、戦隊モノが始まった。ボリュームを下げ、座卓に頬杖をつきふやけた目元でぼーっと眺める。


「すごいなぁ。ニチアサアニメになるなんて」


 今でも信じられないよ……。とスケッチブックを捲る。ガラスペンの下絵に色鉛筆や水彩絵の具で着色したアナログイラスト。



 plume en verreーーカリグラフィーペンの作品タイトルを指でなぞる。色褪せたブルーは15年前のもの。



「ガラスペンの美少女アクションアニメってね」



 プリュム・ルージュ


 プリュム・ブルー


 プリュム・ジョーヌー


 プリュム・ヴァンヴェール


 プリュム・マロン



「後から仲間になるのが二人目のブルーだもんなー」



 プリュム・シエル



 白い衣装に、淡いブルーの控えめな彩色。スラっとしていてクールなお姉さん系のプリュム・ブルーと違って、小柄で華奢なお姫様系女子がシエル。



「一回没になったけど、やっぱりシエルじゃなくっちゃね」



 背丈より大きな武器を振り回して、一生懸命戦う元敵役の女の子。仲間になった理由は、灰色ではなく、白ではなく、青い空を飛びたいから。



「……このインク、すごく綺麗だったから」



 私以外は誰もいない実家の居間に、テレビの音と季節外れの風鈴がやけに大きく響くのだ。

 
 
 

最新記事

すべて表示
中学生イラストレーター[note応募作品]

「ご飯よー」 「はーいー!」 「三回目よー?」 「はーいわかってますー!!」 「そうめんすっかり伸びちゃってるわよー」 「ぬるいー?」 「氷はあるけどねえ」 「もうちょいで行くー!」 「母さんそろそろパートなのよー」 「片しとくからー」 「そー?じゃあお願いねー」  パタパタパタ、パタパタ、バサ、ガラガラ、ガラ、ブーン。 しーん。 「……」 「……ちゃうなあ」 「……あっ」 「……あ〜」 「……」

 
 
 
夏の桜の樹の下で[note応募作品]

ーー桜の樹の下には屍体が埋まっている!  なんて、そこはかとなく不吉なことを考えながら、私は校舎の時計を見る。  15:39ーー待ち合わせまであと6分。 「桜の樹の下には屍体が埋まっているーーああ、だめだめ、私!しゃんとして!」  ミンミンと鳴く蝉の声。私の声は掻き消える。深緑の葉を茂らせた大木の幹に右手を預け、深呼吸。汗がこめかみを伝った。  8/31に、私は桜の下にいる。待ち合わせの30分も前

 
 
 
バブル・パンセとブラックコーヒー[note応募作品]

「あらあら。今日はエラ呼吸の日ね」  朝。レースカーテンを透過する光の中に、白銀のバブルがコポコポと螺旋を描いて立ち昇る。  リビングを進む足取りも、ふわふわふわり。着地までのタイムラグ、踊る髪が波をはらむ。 「おはよう。いつからいるの?」  南国色の、小さな魚たちに問いかける。私の足元を回遊し、観葉植物の狭間へ。 「うーんっ!夏の朝には、こういう趣向もいいわねぇ」  窓辺で大きく背伸びをし、私は

 
 
 

コメント

5つ星のうち0と評価されています。
まだ評価がありません

評価を追加
bottom of page